画像の“権利”をしっかり守る? うわさの「ピュアモデルAI」の仕組みは 開発会社に聞いてみた(2/2 ページ)
──ピュアモデルAIでは「取り込んだ画像とキャプションとを結び付け、データマッチングを進める過程でStable Diffusionを活用している」とのことだが、具体的にどのようにStable Diffusionを使っているのか?
キム ピュアモデルAIにおける、Stable Diffusionの活用方法については特許とも関わっているため、詳細については申し上げ難いです。簡単に説明すると、ピュアモデルAIは、Stable Diffusionをベースに契約済みの作家の絵柄だけで出力するようにファインチューニングしたモデルです。
入力時、Stable Diffusionの基本モデルは最初、契約した作家の絵柄を認識(「今学習中の絵に描いてあるのが何か」「これは身体のどの部分を意味するのか」など)させるプロセスにおいてだけ限定的に活用しています。
出力時は、画像を生成する段階で、そのように学習させたピュアモデルAIの絵柄だけで出力するため、他の権利者の著作権を侵害することはありません。契約した作家が描いたことのない絵を描かせると、ピュアモデルAIはどんな命令をされたかは分かっていても、描く材料がないため、正常に描くことができません。つまり、AIの活用目的と活用の自由度が限定的であり、汎用モデルのように何でも描けるわけではありません。
──特許取得中のAI技術について、科学論文などで外部に公開する予定はあるか?
キム 私たちが開発するピュアモデルAIは、改善のために韓国の国立大学である韓国科学技術院(KAIST)と共同で開発を進めていますが、特許出願中の技術に関してはすでに開発が完了したので、現状では論文を出すなど、外部に公開することは考えていません。
──なぜピュアモデルAIを開発しようと考えたのか
キム SUPERNGINEで働いているメンバーの中に、韓国で有名な漫画家であるキム・ドンファさんの息子がいました。その縁もあり、SUPERNGINE宛に「著作権がしっかり守られる形でAI活用ができないか」という依頼があり、それがピュアモデルAI開発のきっかけになりました。
チャン・ヒョンスさん(以下敬称略) その話を進めていく中で、エンドルフィンが持つAIに対する考えがSUPERNGINEと合致していたため、一緒にAI開発を進めていくことになりました。また、キム・ドンファさんから、日本の漫画家である里中満智子さんと倉田よしみさんを紹介していただきました。両先生からもピュアモデルAIに賛同いただけたため、力を得て日本でもビジネスとして展開していくことにしました。
里中さんと倉田さんは自身が手掛けた既存漫画作品がとても多くて、学習データのサンプルを集めやすく、チャレンジもしやすい状況にありました。また、両先生からの要望として「アイデアはたくさんあるが、体力的に漫画制作が厳しくなるケースが増えてきた」という意見もいただきました。このような問題を生成AIによって解決できないかという目的もあります。
私たちがピュアモデルAIで実現したいのは「AIでモノを作る」というところではなく、あくまで「作家を手伝うアシスタント」ということです。ピュアモデルAIによって著作権の観点で完全に問題のない生成AIを実現し、作家の描きたい作品の完成を手伝う──それがゴール。そのため、さまざまな漫画家の方から関心を寄せていただいているのではないかと思います。
──ピュアモデルAIを1つ作るのに時間やコストはどれくらい必要になるか?
キム ケースバイケースになりますが、作画の難易度によって変わっていきます。作家の既存作品の世界観をピュアモデルAIで再現するなら、約1カ月で実現できます。一方、完全にユニークな世界観の作品を新たに作りたい場合はそれ以上に時間がかかってしまいます。
コスト面についても、目指すゴールによって大きく変動し、数百万円前後必要になる場合が多いです。現状では時間もコストも多くかかりますが、今後も開発を進めていくことで負荷を下げていきたいと考えています。
──ピュアモデルAIの今後の展望について
チャン 里中さんと倉田さんの作品をピュアモデルAIを使って制作をしており、まずはここをしっかり成立させて著作権を守った形での生成AI活用でも良いモノが作れることを示したいです。また、この取り組みを知った外部の方からも「一緒に取り組みたい」と声をかけていただいており、より発展させて世に送り出していきたいと思っています。
エンドルフィン自体も、漫画やWebtoon作品を制作しているため、AI技術をやみくもに使うのではなく、作家の権利を守ることを前提にAI活用を進める、という気持ちはとても強いです。先述の通り、ピュアモデルAIの開発は多大なコストと労力がかかりますが、今は遠回りしてでもこの技術を前に進めていきたいと考えています。
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