過熱する「人間 vs. AI」、解決は“将棋AI”にあり? 開発元・HEROZがつかんだ、企業へのAI導入のコツ(2/3 ページ)
将棋のもたらした「セレンディピティ」
「人間 vs. AI」から「with AI」という成功事例をベースに、HEROZでは近年、建設や金融業界などにAIサービスを提供している。しかし将棋界以外へのAI導入という転換には、多くの困難が伴ったという。関さんが一例として挙げるのは、建設大手の竹中工務店とのエピソードだ。
HEROZは17年、建設大手の竹中工務店と資本提携を締結。HEROZのAI技術と竹中工務店の持つ建設のノウハウと組み合わせて開発を進め、23年には、設計業務における計算作業の支援などをする「構造設計AIシステム」の共同開発に至った。
そもそも、なぜ竹中工務店とタッグを組むに至ったのか。当時、竹中工務店は、建設業界全体で高齢化が進み、人手不足が深刻化するなか、労働環境の改善を図るため、AI技術の導入を検討していたという。また関さんによると、将棋のもたらした「セレンディピティ」(偶然の幸運)があったとのことだ。
「竹中工務店の経営層の方に、将棋好きな方がいた」「アナロジーだが、将棋には正解がなく、その点で建物の設計と似ている。そういう話になり、(両社の)トップ同士が大きな方向性として合意できた」(関さん)
「AIなら何でもできる」をいかに実装するか
とはいえ「アナロジー」だけでプロジェクトは進まない。18年にHEROZに中途入社し、マネジャーとして竹中工務店とのプロジェクトに携わってきた関さんがぶつかったのは、「AIなら何でもできる」という期待を、いかに実装に落とし込んでいくかという課題だった。
関さんは「確かに技術的には前提条件が整えば(AIで)何でもできうる」とする一方、「実際にどういうデータを集めて、どういう風に(AIに)学習させ、どの業務プロセスを自動化するか」など、AIを実装するために必要な仮説を立てるのは難しいと語る。
ではどうすれば仮説を立てられるのか。関さんは、AI技術を理解していることはもちろん、顧客の業務に詳しくなることが重要だと指摘する。実際、竹中工務店とのAIシステムの共同開発では、竹中工務店側に具体的な仕事内容をヒアリング。業務上の課題とAIで解決できる範囲をすり合わせながら、プロジェクトを進めていった。
23年に実装した構造設計AIシステムでは、構造計画やモデル作成、解析・計算といった従来の竹中工務店の業務プロセスをもとに、「AI建物リサーチ」「AI断面推定」「AI部材設計」の3つのシステムを組み合わせた。例えばAI建物リサーチでは、建物を建てる際の計画条件を入力すると、似ている過去事例を自動的に探索してユーザーに表示。設計業務の時間短縮を実現したという。
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