過熱する「人間 vs. AI」、解決は“将棋AI”にあり? 開発元・HEROZがつかんだ、企業へのAI導入のコツ(1/3 ページ)
「お葬式みたいな空気だった」――将棋AIで知られるAIスタートアップ・HEROZ(東京都港区)でGenerative AI SaaS Dev Division担当執行役員を務める関享太さんは“人間がAIに敗北した瞬間”をこう振り返る。2017年、HEROZが開発した将棋AI「ponanza」が、プロ棋士のトップだった佐藤天彦九段(当時名人)に勝利。関さんの周囲からは「もう将棋なんて終わり」との声も聞かれたという。
しかし現在、人間よりはるかに強くなった将棋AIのおかげで、将棋界はさらなる盛り上がりを見せているという。いったいどんな変化があったのか。そして、この変化がもたらしたHEROZの“次の一手”とは何か。関さんに聞いた。
「人間 vs. AI」から「人間 with AI」へ
将棋界へのAI導入について、関さんは人間とAIの関係が変化したと指摘する。2017年ごろはまだ「人間 vs. AI」という構図だったが、その後、将棋AIを活用して将棋界を盛り上げる「人間 with AI」という構図に変化していったという。
例えば、プロ棋士が将棋AIを使って将棋のトレーニングを始めたことで、棋士がより強くなる変化があったという。現在最も強い棋士とされる藤井聡太七冠についても、AIのトレーニングにより、「数年前のスコアと今のスコアを比べると、今の方が強い」と関さんは語る。
また「それ以外にもすごく魅力的な進化があった」とする。将棋ファンの増加だ。
関さんは、近年プロ棋士の対局中継で表示される「評価値」を例に挙げる。評価値とは、将棋AIによって、盤上にある駒の枚数や配置などから、先手と後手、どちらがどれくらい勝ちやすいか(負けやすいか)を数値化したもの。評価値の登場により、将棋に詳しくない人でも、プロ棋士の対局を楽しめるようになった。
アマチュアレベルでも、以前より手軽に将棋が強くなれる環境が整ってきていると関さんは指摘する。これまでは「師匠」と呼ばれるような人について将棋を学んでいたのが、将棋AIを使って自学自習する人が増えているという。
実際、HEROZが運営する将棋対戦アプリ「将棋ウォーズ」でも、AIを活用した将棋学習機能「棋神ラーニング」を提供。将棋を学び始めて、1年ほどで「有段者」(将棋アプリや大会などで一定の実力を認められ、段位を取得した人のこと)になるケースも出てきているという。
「(将棋を)やっている人たちはどんどん強くなっているし、将棋をこれから学ぶ人にとっても良いかたちになっている。見るだけで楽しんでいる人の楽しみ方も広がってきている。ステークホルダー全員がAIによってハッピーになっている」(関さん)
関さんは「100%狙って今の将棋界をHEROZが形作ってきたかというと、貢献はしたが、決して狙い通りではなかった」としつつ、「めちゃくちゃいい先進事例だった」と将棋界へのAI導入を振り返った。
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