OpenAI創業者、巨大モデルのアップデート作業は「大きな苦痛だった」――月イチ更新を可能にした体制とデータの重要性
巨大なAIモデルを調整することは大きな苦痛だった――。米OpenAIの共同創業者で社長を務めるグレッグ・ブロックマン氏は、従来の「GPT」シリーズの開発における苦労をこのように振り返った。
データ基盤製品を提供する米Databricksが米サンフランシスコで開催した「Data + AI Summit 2026」の基調講演では、ブロックマン氏とDatabricks共同創業者のパトリック・ウェンデル氏が対談。OpenAIの開発体制の進化と、モデルの核となるデータの重要性が語られた。
「大きな苦痛だった」フロンティアモデル開発
ブロックマン氏によれば、モデル開発は「事前学習」「事後学習」「安全性の検証」「リリースや価格設計」といったさまざまな工程の積み重ねだ。さらに大規模な学習を並列で実行する際に生じるパラメータの競合状態への対処や、計算資源の構成といった技術的な課題も多数発生する。これらの工程を経てAIモデルを1つの製品としてまとめ上げるのは困難を極め、2年前は巨大モデルのアップデートが「大きな苦痛だった」という。
OpenAIは現在、直近の「GPT-5.4」から「GPT-5.5」のような細かいアップデートを1~2カ月に1回程度実施している。モデル開発の困難をどう克服し、高頻度でのアップデートを実現しているのか。
ブロックマン氏は、アップデートに関するさまざまな業務を組織全体でマネジメントし改善を反復できる体制が整ったと説明。インフラチームと研究チームが連携し、リリースのたびに業務プロセスを磨き込んだ結果、主要モデルを矢継ぎ早に更新できるようになったという。
この成果から、同氏はモデル開発は一見特殊な業務に見えて、実は通常のソフトウェア開発と本質的に変わらないと指摘。複雑な課題を切り分け、多くの担当者が役割を分担して連携する点は共通しているという。
AIの指数関数的な進化は「止まらない」
ブロックマン氏は「(AIの)指数関数的な進化は止まらない」と述べ、この勢いが今後も続くとの見方を示す。
ただし、進化の方向性は変わりつつある。従来のモデルは双方向でやりとりする「チャット」の能力に強みがあったが、これからは回答の正確さに加え、ツールを使いこなす「エージェント」としての能力の強化が重要になる。
ブロックマンによると、最初にその傾向が表れたユースケースがソフトウェア開発で、AIが担う作業の割合は「2割から8割へ広がった」と説明。今後は資料作成やシステム間のデータ連携など、あらゆる知識労働へ同じ波が及ぶとの見方を示した。
データでニーズを把握する重要性
AIモデルの進化において中核的な役割を担うのが「データ」だ。ブロックマン氏は、データがモデルの核となる素材であり、地道なデータのクリーニングの重要性は過小評価できないと強調した。
加えて、利用者がモデルをどう使っているかを把握することも欠かせないとし、「ChatGPT」の利用状況を分析したところ、医療など当初想定していなかった使われ方が広がっていると紹介した。
エージェントの挙動を把握する仕組みも、性能改善と安全性の両面で欠かせなくなるという。「Codex」のようなコーディングエージェントに利用においては、操作のたびに必要な承認が利用者の負担になりがちだが、こうした課題の改善にもデータの活用が生きるとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
経営「AIでラクして早く帰って」→社員「帰らない」 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁
-
2
Microsoftが進めるCopilot再編 「Microsoft Copilot」への移行で、企業への影響は?
-
3
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
4
ローカルLLM利用のクリニックが話題 院長自ら環境を構築 「医療機器より安い」は本当か
-
5
パナソニック・サムスン撤退の裏で「中国勢5割」 独IT見本市「IFA」トップが明かす舞台裏
-
6
恐るるに足らず? 中国フィジカルAI主要15社と5大集積地で見る「点と線と面」
-
7
AIへの「念のためプロンプト」はもう逆効果 Claudeのトークンを浪費する6つのアンチパターン
-
8
経営者は「AI導入」に夢中、現場は「IT環境」に疲弊 ITサポート軽視が招く時間・人件費ロスの実態
-
9
散在する“29万ファイル”をAmazon S3に集約、「AIに聞くだけ」で検索可能に――AWSはどう実現?
-
10
生成AIで物議のレベルファイブ、東京ゲームショウ当日の様子は……現地を見てきた
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR