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パナソニック・サムスン撤退の裏で「中国勢5割」 独IT見本市「IFA」トップが明かす舞台裏

» 2026年09月19日 08時00分 公開
[関口和一ITmedia]

 出展者2000社・団体超のうち過半数が中国勢、そして長年メイン会場の“顔”だったサムスン電子の電撃的な撤退──。

 激変の渦中にある欧州最大の家電見本市「IFA」の運営トップ、IFAマネジメントのライフ・リントナー最高経営責任者(CEO)を9月、開催地のドイツ・ベルリンで単独インタビューした。

 絶対王者サムスン撤退の舞台裏、中国企業の急増に伴う「ダイバーシティ」(多様性)の課題、さらには展示を断念したパナソニックの真相とは? ヒューマノイドや電動自動車(EV)など「脱・家電」へと舵を切る巨大見本市の展望と、グローバルハイテク市場の地殻変動について、リントナーCEOに聞いた。

欧州最大の家電見本市「IFA」の運営トップ、IFAマネジメントのライフ・リントナーCEO(左)と筆者(以下、筆者撮影)

「出展5割が中国勢」の波 絶対王者サムスン撤退の舞台裏

――中国企業の出展がさらに増えているようですが。

 今回の出展者数は2000社・団体を超えたが、確かにその半分以上は中国勢だ。中小企業やOEMメーカーが集まる企業向け展示会場「グローバル・マーケット」への中国企業の出展が多く、数はどうしても多くなる。

 中国の大手メーカーでは小米集団(シャオミ)が今回新たに出展した。ほかにも海爾集団(ハイアール)やTCL科技集団、美的集団(ミデア)、ドリーミーといった企業が大規模なブースを構えているので、展示面積でみても中国勢は4割近い。国際見本市としてはダイバーシティも重要なので、今後は中国以外からの出展をもっと増やしていきたい。

美的集団(ミデア)が展示していた家事ヒューマノイド

――サムスンの撤退には驚きました。

 サムスンは新しい展示棟のシティーキューブに長年出展してきたが、本社の上層部の意向により、展示を縮小することになった。規模を小さくして出展することも考えたようだが、同社はこれまで6000平方メートル以上の展示ブースを構えていたため、出展面積を大幅に縮小すれば、メディアなどの評判が悪くなる。そのため、あえて別なところへ展示会場を移したのだと思う。

 私自身も昔、欧州のサムスンで働いていたことがあるので、われわれとしては、ぜひ再びIFAに出展してもらいたいと思っている。

ベルリン市内の別会場で開かれた記者会見で、サムスン電子の最新スマートフォン「Galaxy Z Fold8」を紹介する欧州サムスンのベンジャミン・ブラウンCMO

――残念ながら今回は、パナソニックも展示をやめてしまいましたね。

 パナソニックは欧米市場での家電流通で提携している中国の大手家電メーカー、創維集団(スカイワース)や、その傘下にあるドイツの家電大手、Metz(メッツ)との共同出展を模索していたようだ。最終的には「Panasonic」ブランドを残し、テレビ事業部門のPanasonic TVの現地販売会社が出展することになった。

 企業向けのブースにしたので商談用に周囲を壁で覆っているが、多くの一般消費者も集まるIFAの展示会場ではあまり得策とはいえないだろう。

 トルコの大手OEMメーカーであるVESTEL(ベステル)も当初は大規模な出展を予定していた。だが本社が財政的な苦境に陥ったことから、ブース費用は払いつつも、今回は展示を取りやめることになった。

サムスン電子が招待者のみを集めたベルリン市内の展示会場の入口

50モデルのヒューマノイドが集結 次世代テクノロジーの現場へ

――今回はロボティクスコーナーの展示が話題ですね。

 宇樹科技(ユニツリー)や智元創新科技(アジボット)など中国企業を中心に18社のロボットメーカーから50モデルのヒューマノイドが出展された。ホールでロボットのパフォーマンスを実施したところ、見学者が集まり過ぎて、会場を一時閉鎖しなければならないほどの人気だった。

 ほかにも韓国のLG電子などは自らのブースにヒューマノイドを展示している。ヒューマノイドが家電製品といえるかどうか分からないが、新しいデジタル技術であることに間違いはない。IFAとしてもこうした分野にさらに注力して行きたい。

ヒューマノイドが何体もパフォーマンスする中国ユニツリーの展示

1日5万9000人が殺到 フォルクスワーゲンも巻き込む「モビリティ拡張」

――コロナ禍で一時、出展者や来場者が減りましたが、再び盛況です。

 出展者数は2025年より100社ほど増え、9月5日土曜日の来場者数は5万9000人を超えた。2025年の土曜日は5万1000人だったので、明らかに来場者も増えている。メディアの報道件数も増えており、展示会として勢いを増している。

 新しいモビリティコーナーも人気だ。独自動車大手のフォルクスワーゲンもEVや車載用AI、デジタルインフォテインメントなどのショーケースを新たに設けるなどIFAに対する関心を強めている。われわれの見本市としても今後もモビリティ分野には力を入れていきたい。

電動バイクを展示する中国AOTOS(アウトス)の展示ブース(右はマネジャーのジアーチュン・リー氏)

著者情報:関口和一(せきぐち・わいち)

(株)MM総研理事長、国際大学GLOCOM客員教授

1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。1988年フルブライト研究員としてハーバード大学留学。1989年英文日経キャップ。1990年ワシントン支局特派員。産業部電機担当キャップを経て、1996年より編集委員を24年間務めた。2000年から15年間、論説委員として情報通信分野などの社説を執筆。日経主催の「世界デジタルサミット」「世界経営者会議」のコーディネーターを25年近く務めた。2019年株式会社MM総研の代表取締役所長に就任。2026年3月よりMM総研理事長を務める。2008年より国際大学GLOCOMの客員教授。この間、法政大学ビジネススクールで15年、東京大学大学院で4年、客員教授を務めた。NHK国際放送のコメンテーターやBSテレビ東京の番組のメインキャスターも兼務した。現在は「CEATEC AWARD」の審査委員長や、「技術経営イノベーション大賞」「ジャパン・ツーリズム・アワード」の審査員などを務める。著書に『NTT 2030年世界戦略』『パソコン革命の旗手たち』『情報探索術』(以上日本経済新聞)、共著に『未来を創る情報通信政策』(NTT出版)、『日本の未来について話そう』(小学館)『新 入門・日本経済』(有斐閣)などがある。

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