NVIDIA(エヌビディア)創業者でCEOのジェンスン・フアン氏は11月13日、都内で開催した自社イベントで、プレス向け質疑応答セッションに応じた。本稿は記者団とのやり取りを記事化したもの。
半導体大手の米NVIDIA(エヌビディア)創業者でCEOのジェンスン・フアン氏は11月13日、都内で開催した自社イベントで、プレス向け質疑応答セッションに応じた。質問は同社の技術的な展望に加え、フアン氏のリーダーシップやマネジメントにも及んだ(関連記事【NVIDIAフアンCEOに聞く孫正義氏の「先を見通す力」 ASI実現への見解は?】を参照)。
フアン氏は、上司と部下が1対1でミーティングをする「1on1」(ワンオンワン)をしないことで知られている。世界で3万人超の従業員を率いていて、直属の部下であるリーダーシップ・チーム(日本で言う経営会議)は何と60人。多数の直属の部下を抱えてうまく組織が機能するのか疑問だ。それでも同社は階層的コミュニケーションを避け、フラットな組織構造を維持しているという。
エヌビディアは11月5日、時価総額が約3兆4300億ドル(約520兆円)と、終値ベースで米アップルや米マイクロソフトを上回り、世界トップになった。従業員数ではアップルにもマイクロソフトにも及ばないエヌビディアが、なぜトップに立てたのか。特異な組織運営をする狙いを、フアン氏が記者団に語った。
―― 1on1をしないということですが、その理由は何でしょうか?
なぜ1on1をやらないか。その理由は、私には1人の人しか知る必要がないことを、伝えることがないからです。私が何かを教えたり、施行したりするときは、社員が見えるところで行います。何か問題解決をするために、他のいろんな人たちが考え方を提供するという形で、話をしています。
例えば戦略を策定したり、それを話したりする際には、1人だけが聞けばいいのではなく、全員がそれを聞く必要があります。会社が間違いを犯して、それを修正しなくてはならない場合も同様です。その1人の人だけではなく、全員がそれを知る必要があります。もし誰かが間違いをしたときに、その当事者だけではなく、あらゆる人がそのミスについて学ぶ必要があるのです。 従って、話をするときには、常に多くの人に対して話をします。
問題解決についてもそうですし、その解決方法を実行する場合にも同様です。推論する場合もそうです。多くの人の前で話をします。それによってナレッジ(企業や組織にとって有益な情報)を渡していく。私たちの知恵を伝えていく。知性を広めていく。経験を共有していく。それらを人に見せて、次の仕様はどうあるべきかを考えてもらうのです。多くの人が学べるような形で、といつも思っています。
――組織の階層をできるだけ薄くするなど、非常に特異なマネジメントをしています。その根本にある信念を教えてください。
組織が非常にフラットな理由はこうです。情報は(階層の)レベルがあると、そのそれぞれのレベルで失われてしまうからです。情報が途中で完全に失われてしまうことを、私たちは望みません。コミュニケーションのチェーンは、なるべくフラットな方がいいのです。
もし組織をフラットにしようと思うと、トップレイヤーが1番大きくなる必要があります。トップレイヤーが大きくなる理由は、マネジャーが非常に高度化しているからです。
マネジメント自体はあまり必要ありません。私のレポーティングライン、私のリーダーシップ・チームは誰も、1on1マネジメントを必要としません。全員がプロフェッショナルです。だからこそ、私のリーダーシップ・チームはできるだけ大きな「1番上の層」でないといけないんです。
当社の経営陣は約60人います。これで全く問題はありません。1人1人が自分のやっていることを、きちんと理解しています。私がマネージする必要がないんです。私のリーダーシップ・チームの層は非常に巨大なんですね。そして、その層の数はその分、少なくなっていくんです。私は3層分ぐらい企業から階層をなくしたんです。
――フアンCEOは社長室を持っていないということです。なぜ社長室を持たないのですか?
CEOは隔離されるべきではないと思います。CEOは人と一緒にいないといけない。1日中、一緒にいないといけないんです。私は1日中、社員と一緒に問題解決をしています。
私が社員と一緒に問題解決をする理由は、私たち(経営者)の経験を移転したいからです。私たちの執行の能力、そして知能を移転させたい。社員に教えたいからです。私どもの仕事ぶりを「皆さん見て」ということなんです。でも私が隔離された別の場所にいたら、情報はその部屋にとどまりますよね。皆さんに伝わりません。そのような状況を阻止したいからです。
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