「うちの会社にAIなんて」――謙遜する中小企業に眠る伸びしろ OpenAIがパートナー網拡充、新規3社が語る

 米OpenAIが、同社製品を販売するエコシステム「OpenAI Partner Network」(以下、Partner Network)を拡充している。日本を含むグローバルで1億5000万ドル(約240億円)規模の投資を表明し、2026年末までに30万人の認定コンサルタントを育成する方針を掲げる。日本でも富士通やNTTデータなど大手SIerを中心に複数社が登録しており、ソフトバンクとの合弁会社SB OAI Japanもその一つだ。

 同ネットワークの日本での拡充について、OpenAI Japanはメディア向けの座談会を開催。新たに加わる3社が日本企業におけるAI活用の現在地を語った。

メディア向け座談会の様子(撮影:筆者)

240億円投資、認定コンサルタント30万人――パートナー網拡充の狙い

 「モデルの能力の進化に比べて、企業がAIから得る価値が追い付いていない」。OpenAI JapanでGTM(Go To Market)パートナーシップ責任者を務める水嶋ディノ氏は、座談会の冒頭でこう切り出した。モデルが日々アップデートされる一方で、企業価値への転換が追い付いていないという。

OpenAI Japanの水嶋ディノ氏(撮影:筆者)

 ギャップの要因として同氏が挙げるのは、現場の業務にAIを組み込むためのスキルや知見の不足だ。製品の使い方だけでなく、既存の業務内容や働き方、現行システムへの理解がなければ、AIの利用を前提とした業務プロセスの構築は難しい。業種や業務の知見、チェンジマネジメント(従業員の行動変容を促す取り組み)、システム統合・運用――Partner Networkを拡大することで、こうしたOpenAIだけでは提供できないスキルを補う狙いがある。

 Partner Networkには大手SIerやコンサルティング企業が名を連ねているが、今回の拡充で地方や中堅・中小企業を支える企業も加わり、裾野の広がりを狙う。認定コンサルタントの育成トレーニングの仕組みも用意されており、水嶋氏は「いろいろな業種、地方、専門性の企業にぜひ参加してほしい」と門戸の広さをアピールした。

「うちの会社にAIなんて」――謙遜の裏に眠るポテンシャル

 座談会には直近加盟、または今後加盟予定の企業3社が登壇し、日本におけるAI活用の現状や、今回の取り組みへの意気込みを語った。

 26年7月に加盟したリバネスナレッジは、地方の中堅・中小企業を含め幅広い企業に経営層向けのAIコーチングや開発支援を提供する。親会社のリバネスグループは約1年前から「ChatGPT」の「Enterprise」プランを活用しており、そのノウハウを外販する。

 リバネスナレッジ(東京都新宿区)の吉田丈治社長によると、地方の企業に提案へ行くと「いや、こんなうちの会社にAIなんて。(AI以外の)ITも使えていないのに」と、謙遜から入る担当者が多いという。

 だが同氏の見立ては逆だ。「中堅・中小企業は大規模なIT投資ができなかったが故に、諦めてきたことが社内にかなり埋もれている。(AIを使うことで)それらを自分たちで作れるようになれば、業務効率は大きく変わる」(吉田氏)。

リバネスナレッジの吉田丈治社長(撮影:筆者)

「ジュニア人材でも品質確保」「AIでSaaS置き換え」 実践ノウハウを外販

 今後加盟予定のシンプレクス(東京都港区)ではエンジニアやプロジェクトマネジャーのほぼ全員がCodexやChatGPTを業務に使う。生成AI活用のCoE組織を率いる氏弘一也氏は「設計書や要件定義書のドラフト作成をAIに任せることで、シニアエンジニアの負荷を減らしながら抜け漏れを防いだり、ジュニアエンジニアでも一定品質の成果物を作れたりするようになった」と語り、社内で得たノウハウを顧客向け支援に生かす考えだ。

シンプレクスの氏弘一也氏(撮影:筆者)

 Recursive(東京都渋谷区)は、米Google DeepMind出身のリサーチサイエンティストが日本で創業した、AIソリューション開発のスタートアップだ。若林峻氏(執行役員)によれば、同社は従来利用してきたSaaSのCRMツールを、Codexで内製したツールに置き換えたという。先進的な活用事例を社内で模索し、その知見を顧客に提供する狙いだ。

Recursiveの若林峻氏(撮影:筆者)

 個人でのAI利用は増えているものの、企業での組織的な活用は道半ばだ。中堅・中小企業が多くを占める日本の産業において、AIが「本当に役に立つ」日はいつになるのか。AIプラットフォーマーのパートナー網がその成否を握っているかもしれない。

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この記事の著者

村田知己
村田知己

ITmedia AI+ 編集記者。市場調査会社でのエンジニア職を経て、2022年アイティメディア入社。キーマンズネット編集部、社内のデータ分析基盤構築担当、ITmedia エンタープライズ編集部を経て現職。

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