千葉豪雨、なぜ当日昼前まで予測できなかったのか ウェザーニューズに聞く「天気予報のメカニズム」のイマ(2/2 ページ)
必要な解像度は「500m以下」 現行モデルは1〜5km
「このような対流システムの構造は、2~3km以下の格子を持つ高解像度数値モデルでないと再現が難しい」と、内藤氏は天気予報モデルの「解像度」の問題を指摘する。天気予報の土台となる数値予報モデルは、大気を格子状に区切り、物理法則に基づいて将来の状態をスパコンで計算する。格子が細かいほど積乱雲のような小さな現象を表現できるが、計算量は膨れ上がる。
内藤氏は、スーパーコンピュータ「京」や「富岳」を活用した研究報告を挙げ、「このような対流システムの構造は2〜3km以下の高解像度数値モデルでないと傾向も再現できず、さらにある程度正確な再現には500m以下の解像度が必要であることが指摘されている」と説明する。
一方、日本を含む領域に対して予報のために運用されているモデルでこれに相当する解像度を現在持つのは、気象庁の局地モデル「LFM」(解像度1km)と韓国気象庁の「RDAPS」(3km)の2種のみ。これにウェザーニューズ独自の「WNI-OWN」、気象庁の「MSM」(いずれも5km)が続く。
「高解像度計算と観測データ同化の計算コストが非常に大きいことがネックとなり、このような現象の予測の精度を上げるにはまだまだ不十分な状況」と内藤氏。つまり今回の千葉豪雨を早い段階で予測できなかったのは、世界の数値予報モデルが現在到達している解像度と計算資源では足りなかったということだ。
予報の現場はどう動いたか
では、モデルが豪雨を描けない中で、予報の現場はどう動いたのか。ウェザーニューズの予報センターは豪雨の3〜4時間前の時点で、発生位置がぶれる可能性も織り込んで、あえて「関東南部全体」という広めの範囲に警戒喚起を出すことを決定。社内各部署へ伝え、順次、各サービスに反映していったという。
判断の根拠はモデルの計算結果だけではない。「その時点までの各種実況による解析と、各予測モデルの分析に基づいて行われた」。同社は独自モデルに加えて世界中の気象機関から予測モデルのデータを収集している。レーダーや観測データから大気の状態をリアルタイムに読み解く「実況解析」を重ね、モデルが描き切れないリスクを人間の判断で補った形だ。
ただし、その時点でも積乱雲群が停滞する場所までは絞り込めず、雨量の見積もりも「悪ブレすると1時間100ミリ超過もある」というリスク情報(ポテンシャル予測)にとどまった。このため同社はギリギリまで精査を重ね、地点単位のピンポイント予報に豪雨が反映されたのは「実際に豪雨となる1時間前程度」だったという。
AIで「今回の豪雨を一部捉えた」
今後、こうした「直前まで予測不能な豪雨」は減らせるのか。内藤氏は「対策は見込める。ただし気象庁や研究機関なども含め、各機関の継続的な取り組みが必要」との立場だ。具体的には(1)気象衛星や気象レーダーなどの広域観測と、各地域の細密な観測網の高度化、(2)数値モデルのさらなる高解像度化、(3)観測データをモデルに取り込む「データ同化」手法の高度化──を挙げる。
そしてもう一つの軸がAIだ。近年、地球規模の気象予測ではAIモデルの進展が著しいが、積乱雲群のような小さなスケールの現象を対象としたAIモデルは「まだ研究開発の初期段階で、今後の可能性として重要」という段階にある。
ウェザーニューズはAIによる短時間予測モデル「AI-Nowcast」を開発中だ。試験運用の中では「今回の豪雨を一部捉えられているものもあった」といい、「予報精度の改善は十分に見込める」と手応えを示す。「AIモデル・物理モデルを組み合わせながら、より高精度な予報を実現し、いち早く社会実装を目指す」とした。
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