ローカルLLMブームの正体(中)
ローカルLLMは「無料だけれど安くない」 個人と企業は何に価値を見いだすのか/中国AIは危険?(1/2 ページ)
前回は、約100万円の“手のひらスパコン”こと「DGX Spark」が価格.comで注目されていることを導入として、ローカルLLMブームを生んだ3つの条件について見てきた。では、ローカルLLMの利用にはどのようなメリットやデメリットがあるのだろうか。
個人が金額をいとわず自前の環境を作り、企業も導入に取り組むのはなぜか。用途とコストの両面から、その価値を考える。
横断特集「AIの置き場所」
生成AIの本番活用では、「どのモデルを使うか」だけでなく、「どこで動かすか」「どう組み合わせるか」も重要だ。クラウドAPI、AI PC/ワークステーション、オンプレミス——最適解は1つではなく、データ、コスト、性能、レイテンシ、ガバナンス、運用力によって変わる。
本特集は、「ローカルLLM」や「国産AI」を入口に、企業が生成AIの実行場所をどう選び、どこまで自社で持つべきか をITmediaのtoBメディア横断で整理する。手元で試す段階から、部門での実装・運用、企業AI基盤の選定、経営としての投資判断までを解きほぐす。
ローカルLLMは誰が何のために使うのか
ローカルLLMはどんな用途で使われているのか。個人の用途と企業の用途で分かれるが、共通して言えるのは「クラウド依存リスクを回避する」目的があるということだ。
クラウドAIに依存していると、ここまで見てきたように輸出規制やアカウント停止などである日突然使えなくなる可能性があるほか、オプトアウトしない限り入力内容が学習に使われてしまうような規約変更もありうる。価格も将来にわたって値上げしない保証はなく、「keep4o」の動きがあったように使いなじんだモデルが廃止されることもある。
また、これは公には認められていないものの「新モデルの発表前には現行モデルの性能が下がる」といった声もある。実際には気のせいだったとしても、クラウド上のAIモデルの稼働状況を直接確認できない以上、そうした不安を払拭しきることは難しい。
個人はロマンと検閲回避 費用の明快さもポイント
その上で個人の用途や目的を見ていくと、「手元で知能が動く」というロマンがまずあるのが大前提として、
- 従量課金のクラウドAPIに比べてハードウェアの初期費用と電気代で使い続けられる明快さ
- 検閲の心配がない環境での創作や実験
- 著作権法における「私的複製」の範囲内に確実に留めつつ著作物をAIで処理したい
- プライバシー性の高い会話や議論をしたい
- 一度ダウンロードすれば奪われない自由
などが挙げられる。
かく言う筆者も、ローカルLLM環境を複数構築しているが基本的にはロマンである。よく「ローカルLLMを導入しているならChatGPTなどのクラウドAIは不要なのか?」ということも聞かれるが、ChatGPTやClaudeもガンガン使っている。後段でも書いているがクラウドAIの方が性能が高いからだ。それはそれ、これはこれなのである。
企業はデータガバナンス 閉域環境への導入も
企業用途でも、業種によってローカルLLMは有望視されている。データガバナンス上クラウドには出せないデータがあったり、インターネットに接続していない閉域環境での業務があったりするためだ。ただし、企業用途の場合はオープンモデルをベースに特定企業や業種向けに特化したものやフルスクラッチ開発したLLMをオンプレミスのGPUサーバに置くようなパターンが多い。そのため「ローカルLLM」というよりは「オンプレミスLLM」などと呼ぶ方が正確だろう。
具体例として、医療機関では那須赤十字病院、JCHO北海道病院、祐愛会 織田病院、三重大学医学部附属病院などが、オンプレミス環境にLLMなど生成AIを導入し、カルテ作成業務の効率化などに取り組んでいる。
金融機関では、あおぞら銀行や常陽銀行が導入実証を進める他、ベンダー側の動きとしてはNTTデータ先端技術が閉域・オンプレミス環境での金融向けローカルLLM活用のPoCを始めている。みずほFGとソフトバンクも、SB IntuitionsのLLM「Sarashina」をベースに金融特化型LLMを開発している。
受託開発の観点でもローカルLLMは価値を発揮する。請け負った顧客の社内規定でクラウドAIに情報を入力するわけにいかない、というケースがあるためだ。ソフトウェアの品質向上支援を手掛けるべリサーブ(千代田区)は、受託業務に生成AIを活用するべく、ローカルLLM基盤の運用を始めている。
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