“割に合わない”AI導入、どう回避? キホンを歴14年のPKSHAに聞いた(2/2 ページ)

 「現場の人間にとってのAI導入は、やる作業が1つ増えることを意味する。経営視点でメリットがあったとしても、現場の従業員が使いたくない場合もある。経営と現場のメリットの両立を目指すなら、(初期コストをかけても)業務の特殊性にフィットするようシステムをカスタマイズしなくてはならない」(森下氏)

 一方、社内問い合わせなどのバックオフィス業務は、各企業で共通する部分も少なくない。こうした業務については、SaaSを利用して「安く作れる代わりに同じ機能を使ってもらう」(森下氏)といった選択肢もありうる。

 加えて、森下氏は「技術進歩を正しく予測する」ことも重要と指摘する。米Microsoftや米OpenAIなどがAIサービスとして一般提供する可能性がある機能と“被らない”ようにするためだ。

 「(こうした米AI企業が)標準機能として提供するようなシステムについては、顧客に対して『それは作らないで待った方が良い』『既存サービスをこのように使えばまかなえるのではないか』といった提案をする場合もある」(森下氏)

投資先はAIか人か カギは「長期的な視点」

 他方、最近では、経営視点で「AIと人のどちらに投資すべきか」という議論も一部で注目を集めている。これに対し、森下氏は長期的な視点がカギになると説明する。

 例えば、AIへの投資にのみ注力し、経験豊富な人材だけで組織を運営して、若手を採らない状態を続けたとする。すると残った人材が退職した後、誰が会社を担うのかという問題が生じる。

 「AIと人を役割分担して会社を回したとき、どのような変化が起きるのかが重要だ。社長とAIだけで本当に会社が成り立つなら良いが、おそらくそうはならない。運用の結果、たまっていくものをわれわれも意識している」(森下氏)

AIエンジニアのKPIに「顧客成果」

 “割に合う”AI導入を支援するため、PKSHA Technologyでは、AI開発に携わる同社の「アルゴリズムエンジニア」の評価制度も工夫している。

 生成AIシステムはそもそも、一般的なソフトウェアとは異なり、あらゆる入力に対して100%の精度を出すことは難しい。一方、ベースとなるAIモデルの進化や、ユーザーのフィードバックなどにより、使うほど性能が向上する可能性もある。

 森下氏が重視するのは、AIと人が互いに補いながら進化する仕組みだ。そこで同社では、アルゴリズムエンジニアが開発だけでなく、顧客への提案から運用まで一気通貫で携わる体制を整えている。KPI(重要業績評価指標)にも「顧客が成果を出せているか」を含めているという。

 「生成AIの導入では、できそうだけど、いざ使うと割に合わないケースが多発する。精度も100%にはならず、ChatGPTに依頼するタスクが初期と今では異なるように、使い方も変わっていく。そのうえで最後にコストの問題が出てくる。値段に見合う価値を生み出せて初めて社会実装できる」(森下氏)

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