“割に合わない”AI導入、どう回避? キホンを歴14年のPKSHAに聞いた(1/2 ページ)
「できそうだけど、いざ使うと割に合わない」が多発する――AIサービスなどを開発するPKSHA Technologyの森下賢志氏(執行役員 VPoE)は、企業における生成AI導入の難しさをこのように表現する。
生成AIの性能はここ数年で飛躍的に向上し、企業にも浸透しつつある。一方、想定より実務で使えない、投資したコストに見合う効果が生まれないといった課題を抱える企業も少なくない。
PKSHA Technologyは2012年の設立後、生成AIの登場以前からAIの社会実装に注力し、企業の課題解決を目指してきた。“割に合う”形でAI導入を進めるためのポイントを森下氏に聞いた。
生成AIは「基本的に高い」
AIと一口に言っても、生成AI以前にもさまざまな手法が使われてきた。人間が決めた規則に従って動く「ルールベース型AI」、人間が指定した“特徴”に沿って大量のデータから分類や予測を行う「機械学習」、生物の神経回路を模したネットワーク層を複数重ねて“特徴”の抽出まで自動化する「ディープラーニング」などが代表だ。
森下氏は、PKSHA Technologyならではの視点として、「ChatGPT」の登場以前にディープラーニングがブームになった際の経験を挙げる。
ディープラーニングの処理では、基本的にGPUが必要となる。ルールベースや機械学習でも解けるタスクに利用すると、その分コストが高くなるにもかかわらず、「これからのAIは全てディープラーニングだ」といった誤解も広まったという。
現在の生成AIブームも状況は大きく変わらない。これらのAI技術は「基本的に高い」と森下氏。社会実装を進める際はまず、本当に生成AIが必要かどうか、コストの観点から見極める必要があると指摘する。
「極端な話、生成AIにお金をかけるのと、時給1400円ほどの大学生のアルバイトを雇うのどちらが良いのか。人は自然言語の処理に長けている。こうした比較も社会実装には重要だ。1カ月で何百万円もAIに費やし、バイトを雇えば済むタスクを解決するのは、社会にとっても良くない」(森下氏)
生成AIの出力は「揺らぎがある」
コストだけでなく、技術的な向き不向きも重要になる。
例えば、PKSHA Technologyが手掛けるクレジットカードの不正利用検知システムでは、ミリ秒単位の処理が求められる。また、クレジットカードは世界中で使われるため、1社で月間数千万件規模のデータを扱う場合が多い。こうした場合には、生成AIよりも機械学習が有利という。
「生成AIに読み込ませられないほどのデータを扱い、高速に結果を出すものを作る時は、今でも機械学習を使い続けている」(森下氏)
スーパーマーケット「サミットストア」における従業員の作業割り当て表を最適化するシステムを開発した事例でも、生成AIは利用しなかった。代わりに、決められた規則の中で成果を最大化したり、コストを最小化したりする「数理最適化」を活用した。
「生成AIには結果に揺らぎがある。この日はうまくいったけど、この日は違うといったケースが出てくる。しかしシフトの作成では、起きてほしいこと・起きてほしくないことが厳密に決まっている」(森下氏)
一方、森下氏が生成AIの強みの一つとして挙げるのが、自然言語処理だ。チャットAIに代表されるように、生成AIは自然言語によって指示できる。専門的な知識がなくても操作できるため、幅広い層のユーザーが利用しやすい。
機械学習で扱いにくいデータを“人間に近い”形で読み取ることも得意だ。手書きの文書や図の配置が重要な資料などが多い製造業では、生成AIの登場以降に活用事例が増えたという。
SaaSか、作るか、それとも「待つ」か
実際にAIシステムを導入する際のポイントもある。森下氏は「業務の特殊性にどれだけ合わせるか」が基準と説明する。
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