Notion AIの「クレジット制」導入は改悪か? コスト最適化のヒケツを開発責任者に聞いた

 AI機能の提供形態として「クレジット」制を導入したクラウドワークスペース「Notion」。従来の月額制から、利用量に応じてクレジットを消費する形に変わる。「改悪だ」「クレジットが足りなくなるのでは」――。クレジット制の発表時にはこんな声も上がっていた。

 しかし、企業向けAIサービス全般が従量課金制へと移行し始めている流れもある。ならば、「できるだけ無駄なコストをかけずにAIに作業をさせる」スキルがこれから重要になるのではないだろうか。

 ユーザー側でどんな工夫が可能なのか。同社でAIおよびコアプロダクト部門の責任者を務めるシール・イェホシュア氏に聞いた。

「Auto」ならクレジットが「最大10倍長持ち」

 新たなクレジット制では、「ビジネス」と「エンタープライズ」プランのメンバー1人当たりに、Notionがモデルを選ぶ作業に使う「スタンダードクレジット」が毎月1500、ユーザー自身がモデルを選ぶ作業や、自作のAIエージェント「カスタムエージェント」の実行に使う「セレクトクレジット」が毎月500付与される。いずれも翌月には繰り越せない。使い切った後も、管理者が許可すれば、ワークスペース単位で購入する「Notionクレジット」で利用を続けられる。新規のワークスペースには既に適用されており、既存のワークスペースも11月2日に移行する。

 Notionの検証では、タスクごとに利用モデルを振り分ける「Auto」モードを使うと、米Anthropicの「Claude Opus 5.5」(以下、Opus 5.5)や米OpenAIの「GPT-6 Astra」を使った場合と同等の出力品質を保ちつつ、平均コストを約90%削減できた。メールの推敲(すいこう)のような単純なタスクではAutoが5クレジット、Opus 5.5が50クレジット、“データベース”(Notion内の複数ページを管理する仕組み)の作成のような複雑なタスクではそれぞれ25クレジット、150クレジットを消費したという。

 同社はAutoモードのモデルルーターの改善により、「大多数のユーザーはクレジットポイントを使い切ることはない」と試算している。

Autoと「Opus 5.5」のタスク当たり推定消費クレジット|Notion

 「Autoモードは、その仕事に最もコスト効果の高いモデルを提供する。それが私たちの基本的な考え方だ」とイェホシュア氏は説明する。単純なタスクには軽量なモデルを、コーディングのような難しいタスクには推論能力の高いモデルを使い、コストを最適化すると共に、モデル選びの負担をユーザーから取り除く狙いだ。

Notionのシール・イェホシュア氏|撮影:筆者

 Autoのコスト効率は継続的に改善しているといい、「カスタムエージェントを従量課金で使うユーザーは、時間がたつほど安く使えるようになる。双方にとって得になる」(イェホシュア氏)。

 そのために、Notionは各AI開発企業と連携し、Notion上のタスクごとの完遂率とコストを評価している。評価結果は、評価手法と併せて自社Webサイトで公開している。

Notionによる各モデルのタスク完遂率とコストの評価|Notion

「何度も検索」はトークンの無駄

 Autoモードの使用以外で、ユーザーにできる節約法はあるか。イェホシュア氏が強調したのが、AIに渡すコンテキストの質だ。

 同氏によれば、多少散らかっていても、コンテキストが1カ所にまとまっていればモデルが複数のサービスを横断して調べずに済むため、AIの利用コスト削減につながるという。その上で、情報が整理され、矛盾する情報が少ないほど、モデルが混乱しにくくなり効果的だとする。「AIの無駄の多くは、1回で済むはずの検索を何度も繰り返すことから生じる」(同氏)。

 整理されたコンテキストを保つために、イェホシュア氏は「エージェントにコンテキストを管理させる」方法を勧めている。

 例えば、イェホシュア氏のチームメンバーの出張の領収書は全て同氏のメールに届くため、エージェントがそれを読み取り、誰がいつどこにいるかを把握できるデータベースを作っているという。「あの人は今どこ?」と聞けば、複数の情報源を探さずに、そのデータベースから答えが返ってくる。「エージェントによく聞く質問やよく頼むタスクがあるなら、そのデータを整理・構造化するカスタムエージェントに投資する価値がある」(同氏)。

 また、終了したり中止したりしたプロジェクトをアーカイブすることも綺麗なコンテキストを保つコツだという。

 Notionだけでなく、米Microsoftの「Microsoft 365 Copilot」も一部サービスに従量課金制を導入するなど、今後も企業向けのAIサービスを「定額課金で使い放題」できるとは限らない。良い意味でも悪い意味でも、使い方がそのままコストに表れる世界では、日常的に情報を整理しておけるかどうかがコスト抑制の鍵になりそうだ。

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この記事の著者

村田知己
村田知己

ITmedia AI+ 編集記者。市場調査会社でのエンジニア職を経て、2022年アイティメディア入社。キーマンズネット編集部、社内のデータ分析基盤構築担当、ITmedia エンタープライズ編集部を経て現職。

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