本記事は、電子情報技術産業協会(JEITA)が主催したイベント「CEATEC 2026」(10月13〜16日開催)のカンファレンスから「AI時代を牽引する年収3000万円の仕事 FDE (Forward Deployed Engineer)〜令和8年熊本地震で動いた、FDEチームの奮闘ストーリー」を取材したもの。
「現場では、こんなものは何も使えない」――令和8年熊本地震の発災から2日後、現場を支援しようと、あるIT企業が“避難状況ダッシュボード”を開発した。しかし、現地の反応は思いもよらぬものだった。
AIでプログラムを書き、ソフトウェアを素早く構築できるようになっても、完成品が現場で役立つとは限らない。一度は突き返されたダッシュボード。しかし、改善を重ねた結果、医療チームの出動先を絞り込む材料として熊本県災害対策本部が参照するまでに至った。
ダッシュボードを開発したのは、人流データを提供するunerry(東京都千代田区)だ。同社は、利用者の許諾を得てスマートフォンのアプリから集めた位置情報を基に、月間840億件以上の人流データを扱っている。
同社の営業職、小野健士氏(スマートシティ事業部 シニアコンサルタント)が発災直後に動いた。誰に頼まれたわけでもなく、社内のエンジニアにデータを出せるかを確かめ、社長に直談判したという。
背中を押したのは、令和6年能登半島地震(2024年)のときに得た苦い経験だった。地震から1カ月後に、大学の研究者へ人流データを渡した際に「これが発災直後にあったら、もっと人を助けられたかもしれない」と言われたことが、ずっと頭にあったという。
熊本地震を受け、小野氏らのチームは防災科学技術研究所(防災科研)の研究者と連携し、複数のデータを視覚化したダッシュボードの「初版」を開発。発災の翌々日に、現地に届けた。道路の通行状況や避難者数など、データを可能な限り盛り込んだが、返ってきたのは「現場ではこんなものは何も使えない」という声だった。
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