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BD対HD DVD戦争に着地点はない?(3/3 ページ)

» 2004年12月20日 10時07分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 CDにしろDVDにしろ、ROMメディアの世代交代が爆発的な勢いで進んだのは、やはりメディアが一種類しかなく、「新 対 旧」、あるいは「デジタル 対 アナログ」というシンプルな構図で、みんな一丸となって旧来の不便を駆逐していこうという勢いがあったからだ。

 新しいROMメディアの覇権争いを巡っては、旧メディアとの互換性という方向にも飛び火している。DVDとHD DVDの2層ディスクは冒頭でも書いたが、実はBDも10月に、CDと一体化したディスク規格を発表している。ソニーが発表したこの「BD/CD Dual Format Disc」は2タイプあり、一つはBDの裏面にCDの記録層を設けるタイプ、もう一つは同じ面に両方の記録層を設けるタイプだ。

 この多フォーマットメディアは、映像よりも先に技術採用が行なわれる音楽業界では、まさに混沌としか言いようのない状況になっている。

 SACDはCD層を設けた「ハイブリッドSACD」になり、それに対抗してDVD Audioは音楽CDと貼り合わせた「Dual Disc」が登場した。似たようなメディア同士では、DVD VideoとDVD Audioのハイブリッドメディアもあるし、DVD Videoフォーマットに音楽を記録するDVDミュージックというものもある。さらに米国には、DTS 5.1chサラウンドで音楽を収録したDVD VideoもDVD Audioもある。

 これらは過渡期のものと言えなくもないが、結局のところ、これという決定打がないから、なんでもアリアリの状態にまでなってしまったのだ。このような混沌とした状態から、今さら何らかの新しい秩序が生まれてくるとは思えない。

 BDもHD DVDも、ROMメディアがそのまま出てくるようであれば、結局そのツケはユーザーが払うことになる。もうこんなことを今さら書くのもアホらしいのだが、われわれが見たいのはメディアではなく、コンテンツなのだ。このままでは見たい映画ごとに違う種類のメディアを買うハメになる。だが再生するのは、おそらく1台のコンパチブルプレーヤーだ。単に流通メディアが分かれているだけ、という事実は、ユーザー不在以外の何ものでもない。

 このままセルメディアがもめていくようであれば、さらに上を行く新規格が登場するすきを生むだろう。そればかりか全く別のメディア、例えばペイパービュー放送やVODが後ろからヒタヒタとやってきてゴッソリ持っていくという、大逆転の図式も考えられる。

 過去の例を見ても、ユーザーは安くて便利なものを望むのは自明の理だ。これだけの争いと損害を経験しておきながら、覇権が絡むと、人間というのはちっとも過去の経験が生かせない生き物らしい。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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