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日本にサマータイムは有効か(3/3 ページ)

» 2005年04月04日 08時47分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 かつて日本がサマータイムを導入したのは半世紀以上前だ。一方、韓国でも1988年のソウルオリンピックの年に、一時的にサマータイムを実施したことがあるが、今の韓国ならともかく、急成長国家の20数年前、しかもオリンピックという特殊事情が絡むと、これもあまり参考にならない。

 最近の実験では、北海道が昨年札幌商工会議所の主催でサマータイムを実施した。今年も行なうそうである。

 国内ではもっとも規模の大きい実験だと言えるだろうが、残念ながらこの実験では、交通機関のダイヤや信号プログラム、放送などのシステムまでずらしたわけではない。この実験はどちらかといえば「大人数で早寝早起きをやってみた」というものであり、この結果を本来のサマータイムの結果として合わせ込むのは無理がある。

 全国規模で本格的なサマータイム実施にかかる費用を考えると、経済的な効果はかなり相殺されるか、ヘタをすれば実施初年度は大幅な「サマータイム赤字」を産む可能性は非常に高い。

 サマータイムの効果に関しては、経済的、身体的な効果に関して議論は進んでいる。しかしいつもこの手の議論ではそうなのだが、どうも精神の健康面、「メンタルヘルス」の議論が抜けているように思えてならない。

 米国でサマータイムを体験すると、筆者は日が傾いた黄金色に染まる街並みを歩きながら、いつも父のことや、赤坂溜池の夕日のことを思い出す。自分の長い影法師を踏みながら、家路につくのはなかなか気分がいいものである。そうした中で誰かのことを考えたり、また自分の人生を考えたりすることで、自分自身を見つめ直すきっかけができれば、「早く家に帰る」効果はあったと言うべきだろう。

 国の制度としてサマータイムを導入すべきかという点に関しては、現時点では降って湧いたような話で、障害が多いと言わざるを得ない。しかしこれをきっかけにして、それぞれの業態や会社単位で就業時間を前にずらすなどの試みがあってもいいのではないかと思う。

 それはたとえば「夕焼けを見ながら家に帰ろうプロジェクト」でもいいじゃないか。しゃっちこばらず、サマータイムのオイシイところだけをもらっちゃえばいいのである。こんな夕焼けを見ながら家に帰れるのであれば、幸せだろう(mpgファイル、約11.1Mバイト)。

 そしていきなり制度化の前に、そういう粋な計らいが認められるような社会基盤作りが、先にあるべきだ。まずはみんなして、気持ちのいい夕暮れを体験してみるというのは、悪くない考えだろう。

 それがきっかけで会社を辞める者が出てきても、それはそれでしょうがないことではないか。

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