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神々の失墜、崩壊するコピーワンス小寺信良(1/3 ページ)

» 2006年08月07日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 総務省の諮問機関である情報通信審議会から8月1日に、「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の第3次中間答申が発表された。従来コピーワンスでの運用であったデジタル放送に対して、事実上の規制緩和を求める要請が出されている。

 コピーワンスの見直し論はすでに昨年から始まっており、昨年末には家電メーカー代表として、いわゆる「JEITA案」と呼ばれる方式が提案されていたわけだが、放送局側の主張と噛み合わず、事実上もの別れとなっていた。今回の答申は、コピーワンスの存在がデジタル放送の普及の障害となっているという見方が明確になっており、言うなればいつまでやっとるんじゃオノレらこんなことであと5年で乗り換えできると思っとるのかオラ、と総務省がしびれを切らした格好に見える。

 これまでJEITA案は、家電メーカー側の立場を取る経産省が支持しているのはわかっていたが、今回は放送事業を管轄している総務省がJEITA案であるEPN(Encryption Plus Non-assertion)方式を支持したことで、かなり高い確率でコピーワンスが撤廃される可能性が出てきた。12月までの早い時期にこれが実際に転換可能なのか、それに対するリスクやコストなどの検討結果が公開されることになっている。

 また翌2日からは、早速今回の答申に対する意見募集が実施されている。行政がやる仕事としては、いつになく素早い展開である。上記のリンクから今回の答申内容がダウンロードできるので、それを見ながら今回までの経緯と今後の展開を予測してみよう。

見限られたメディアの神々

 NHKのあり方、IP放送、補償金問題、そしてコンテンツ保護など、いま放送はコンテンツの在り方や放送事業そのものについて、新しい局面に立たされている。放送に関する審議を行なっているところは全部で5カ所あり、活発な議論が展開されているわけだが、それがゆえにどの委員会や審議会で何をやっているのかがわかりにくくなってきている。ちょっとここで整理してみよう。

1. 今回の総務省「情報通信審議会」は、総務大臣の諮問機関である。これは、ここで審議された内容を総務大臣に意見として述べることができるということを意味している。昨年7月31日に公表した第二次中間答申で、早くもコピーワンス緩和を提言している。

2. 同じく総務省の「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、NHKの在り方や放送制度の検討を行なう場である。今年1月20日から始まり、今年6月までに14回の会合を行なうなど、かなり早いペースで検討が行なわれた。6月6日に最終報告書が出されており、現在は解散しているものと思われる。ただここはあくまでも懇談会であり、何かを決定する場ではないが、この結論は閣議決定に反映される可能性がある。

3. 内閣府主導で行なわれている「規制改革・民間開放推進会議」は、法体系の見直しや具体的な施策の方針を検討しており、NHK改革や放送の地域免許制の見直しなどが議題になっている。今年7月31日には、「規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する中間答申」が出された。すでに昨年12月の第2次答申でもコピーワンス緩和の方針を打ち出していたが、今回の中間答申でも同様の趣旨が打ち出されている。

4. 文化庁で行なわれている「文化審議会・著作権分科会」は、ここの下部にある「法制問題小委委員会」で以前録音録画補償金問題が取り上げられていたため、よく知られた名前である。現在法制問題小委員会はIP送信に関する問題を審議しており、補償金制度の見直しは「私的録音録画小委員会」を新設して、そこで議論が行なわれている。

5. 内閣に設置されている「知的財産戦略本部」は、各省庁下の委員会などからの報告がまとめられて、落とし込まれるところである。ここで知財に関する内閣の基本的な方向性を示す「知的財産推進計画」を毎年発表しており、今年6月に発表された「知的財産推進計画2006」の中でも、総務省・文部科学省、経済産業省の連名でコピーワンスの見直しが唱われている。

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