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コラム
» 2006年08月18日 11時00分 UPDATE

ネットベンチャー3.0【第4回】:2004年、カンブリア紀のような進化の爆発が起きた (2/3)

[佐々木俊尚,ITmedia]

CGMの力を生かす

 この連載の第2回(自力でWeb2.0へたどり着いた中古車店)でも取り上げたように、1990年代にアメリカからやってきた知の共有システム、ナレッジマネジメントは日本ではあまりうまくいかなかった。暗黙知を人々の間からうまく吸い上げ、そしてそれらを人々にうまく使わせるノウハウが確立しなかったからである。一方で、2002年当時は「2ちゃんねる」に代表される匿名掲示板がビジネスサイドからも注目され始めた時期でもあった。異常なまでに活発な書き込みが行われていることに対して、「どうやったらあれほど活性化できるのか」と関心を持たれていたのである。つまりはCGM(Consumer Generated Media)の破壊力に、人々は気づき始めていたのだ。

 兼元社長は、この掲示板のCGM的パワーを、ナレッジマネジメントに生かせないかと考えた。その試行錯誤の結果が、質問と回答を軸にした掲示板というシステムだったのである。掲示板システムによって、参加者は自由に書き込みを行える。そして質問とその回答を軸にして、質問-回答のデータをひとそろいで保存することで、求める情報をすぐに検索できる。このモデルは業界内でも注目を集めた。兼元社長は会社を設立し、「OKWebコミュニティ」という名称で、無料の質問回答掲示板をインターネット上に設置した。そして同時に、このシステムを使った企業内のナレッジマネジメントシステムを開発・販売し、収益につなげるビジネスモデルを作ったのである。

 とはいえ同社の成長は、ゆるやかだった。カスタマーサポートやポータルのサービスなどに同社の質問回答システムを利用しようという提携企業は、ビジネスを開始して4年後の2004年初めごろまでは十数社程度。登録者数も10万人を越えた程度だった。月間ページビューも3000万前後と、ポータルとしては小規模なレベルだったのである。

爆発的変化は2004年、日米で同時に

 ところが、2004年の春から夏にかけて、突如として大変化が起きた。オウケイウェイブの側が大規模なキャンペーンを仕掛けたわけではなかったのにもかかわらず、突如として急成長しはじめたのである。提携先がまず次々と決まった。2004年5月のわずか1か月間で提携企業は5社増え、最終的に約40社にまで達した。またページビューの成長もこれに合わせて急増し、等比級数的なカーブを描いて月間1億ページビューにまで上り詰めてしまったのだ。

 2004年というのは、初めてWeb2.0という言葉が語られた年である。正確を期するために、WikipediaのWeb2.0の項目を引用しておこう。2006年8月16日時点の記載では、こう書かれている。

<この用語は、オライリーメディア社の Dale Dougherty が作ったもので、MediaLive社と共同で開催を予定していた会議に向けてアイデアを出すためのブレインストーミングをしていて出てきた言葉である。Dougherty は Web のルールが変化しビジネスモデルが変化することによってルネッサンス期にあると示唆した。Dougherty が例として挙げたのは、「DoubleClick は Web 1.0だったが、Google AdSense は Web 2.0 だ。Ofoto は Web 1.0 だったが、Flickr は Web 2.0だ」ということであって、言葉を定義したわけではない。彼はビジネス面を強化するためにジャーナリストの John Battelle を参加させ、2004年10月、最初の Web 2.0 カンファレンスを開催した。二回目は2005年10月に開催されている>

 この同じ年に、なぜかオーケイウェイブの質問回答モデルに対しての企業からアプローチが増え、同社が提案する集合知があちこちで利用されるようになった。Web2.0という言葉が日本にやってきていたわけではない。とすれば、それはある種のシンクロニシティ(共時性)と呼ぶべきなのだろうか。まるでカンブリア紀に進化の爆発が起きたように、日米で同時にWeb2.0的なモデルへの認識が高まり、Web2.0的な集合知の考え方が同時に普及していったのである。

 兼元社長は、次のように分析している。「結局のところ、質問回答モデルをベースにしたナレッジマネジメントというのはさまざまなノウハウの蓄積が必要で、ハードルが高かった。多くの企業は自前で同じようなモデルを構築しようと考えたが、結局うまくノウハウを蓄積することができず、それで結果としてアウトソースという選択を選ぶようになったのかもしれない」

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