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» 2006年10月10日 12時30分 UPDATE

金融・経済コラム:ロックアップ条項を廃止すればIPOバブル終焉可能……? (1/2)

新規上場企業、特にネット関連企業では当初の株価が公募価格を大きく上回ることが多い状況が続いています。しかししばらくして株価が急落ということもめずらしくありません。今回はこの問題を「ロックアップ条項」から考察します。

[保田隆明,ITmedia]

 ここ数年間、新規上場企業の株価は初値が公募価格を上回る割合が非常に高く、IPO株を購入すればほぼ必ず儲かるというような状況となり、証券会社はIPO株を購入希望者に抽選で販売する状況になっています。今でも新聞や雑誌では「どうやったらIPO株の抽選に当たりやすいか」などの特集が組まれていたりします。

 最近でこそ、公募価格と初値の開きがさほど大きくないIPO株も散見されますが、8月下旬に上場したネットエイジ、9月中旬に上場したミクシィとネット関連2社のIPOでは、初値が公募価格の約2倍となり、最近低迷気味の新興市場の回復に寄与するかと期待されました。

初値暴騰後、株価下落基調のネットエイジとミクシィ

 しかし、ネットエイジの株価は上場後、一時は初値を上回っていましたが、すぐに下げ基調となり先週には公募価格を下回りました。この状況に対して、先週の日経新聞では株価下落の原因のひとつとして「ロックアップ条項」がなかったことを挙げていました。ミクシィの株価はまだ公募価格を上回っていますが、初値に比べると先週金曜日の終値では約30%のダウンとなっています。ミクシィの株式にもロックアップ条項は付いていません。

ロックアップ条項とは

 ロックアップとは、野村證券のWebサイトからの抜粋では「会社役員・大株主・ベンチャーキャピタルなどの公開前の会社の株主が、その株式が公開された後に一定期間、市場で持株を売却することができないよう公開前に契約を交わす制度のことをいう」となっています。

 つまり、法律で定められるものではありませんが、企業の上場後の一定期間(180日が一般的)は主要株主は株式の売却をできないようにするものです。どうしてこのような条項を付けることがあるかと言うと、株価の需給悪化による株価の大幅な変動(下落)を避けるためです。

 株式上場時は、企業は通常、いくばくかの新株を発行し資金調達を行います。また同時に、既存株主による株式売出しを行います。この合計株式数が上場時に購入希望者に販売されます。主要株主にロックアップ条項がついていれば、上場後しばらくは、この販売株式数イコール市場で取引される株数となり、投資家は取引株数が把握できて安心して投資ができるというものです。

もし、主要株主が上場後にワラワラと市場で持分を売却すると、市場での取引株数は増えます。そしてこれは、株価は需給関係で決まっていますので、株価を押し下げる要因となります。

ロックアップ条項が誘発したIPOバブル

 もともとは株価の大幅な下落を避けるため、そして安定した取引環境を提供するために盛り込まれるロックアップ条項ですが、日本におけるIPO株の過熱要因のひとつには、上場時に投資家に販売される株数が少ないということもあります。販売株数が少ないと、自然と需給が逼迫し初値、株価が上がり基調となります。わざと販売株数を少なくして、株価の上昇を狙っているのではないかと疑ってしまったりもします。

 この化けの皮が剥がれるのは、ロックアップ条項が解除となる上場後180日以降となります。主要株主も自由に売買できますので、自然と株価下落要因となります。新聞などで「ロックアップ期間終了による株価下落」という記事を目にしたことある人も多いでしょう。

 しかし、上場から180日も経っていればその株に対する世間の興味も低くなっているでしょうし、株価もあまり大きな動きを見せないので、あまり注目されることはないでしょう。ということで、今まではロックアップ条項は、上場株式にあって当然の条項であって、IPOバブルの誘発の原因となっていることはあまり議論されませんでした。

そもそもロックアップ条項は必要なのか?

 ロックアップの対象となる主要株主には役員、従業員、そして以前から投資をしているベンチャーキャピタルなどが含まれます。つまり、ロックアップの対象となる主要株主こそが、最も企業のことを良く知っているインサイダーということになります。彼らが株を売却したいと思うということは、その企業の将来性は怪しいと言わざるを得ません。証券取引所や市場に対しては「今後、うちの会社はこんなに成長するんです」とアピールして上場したばかりの企業の内部者が株を上場直後から売っているなんて、整合性がありません。

 したがって、上場直後に主要株主が株を売りたいとは思わない「はず」です。であれば、ロックアップ条項なんて本来なら必要ないわけです。

ベンチャーキャピタルの事情

 しかし、実際には主要株主の中にも上場直後に株式を売却したいと思う人達もいます。その最たる存在はベンチャーキャピタルですが、彼らには彼らなりの事情があります。それはファンドの満期です。ベンチャーキャピタルは投資家からお金を預かって、それを運用する形でベンチャー企業の株式を購入します。そして通常は運用期間というものが存在し、例えば7年とか10年です。その意味するところは7年経ったら、もしくは10年経ったらファンドは解散し投資家にお金を戻さないといけません。

 今でこそ、会社設立から数年で上場する企業も出てきていますが、通常はベンチャー企業が上場するまでは結構な時間がかかることが通常です。つまり、ベンチャーキャピタルファンドの設立間もない頃にベンチャー企業に投資をしたとしても、その企業が上場をするときにはもうファンドの満期が間近という場合もあるのです。そんな場合、ベンチャーキャピタルは上場後間もない時期に株式を売却せざるを得ません。

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