この2つの相違点から学べることは多い。いくつかの仮説を立てて考えてみよう。
例えば録画ネットが、録画ではなくストリーミングのサービスだったら、勝ち目があっただろうか。この場合はおそらく、私的複製が争点にはならず、送信可能化権で争われることになっただろう。
仮にそうだとしても、録画ネット全体が1つのシステムであると見なされる前提が壊れない限り、1対多の送信となり、勝てなかっただろうと思われる。自分たちでシステムを作って管理してしまったら、それはハウジングサービスを超える事業と見なされてしまう。
録画ネットが一般的とは言いにくいLinux OS搭載機を使わず、広く販売されているWindowsのテレパソ機を使ってのサービスだったらどうだろうか。これは非常にややこしい事態になるだろう。録画以外にストリーミングもできるとなれば、送信可能化権と複製権の両方で争わなければならない。
全体のシステムをどのように作るか、そのテレパソがWANを超えてアクセスできるようにするために、どの程度業者側の関与が必要になるかが問われるだろう。つまりそこが、全体で1つのシステムを構成し、管理責任が業者側にあるか、ということ判断基準となる。
また、パソコンは司法側から見て信頼されていないフシがある。どんなことでも可能であり、セキュアではないという扱いだ。これを覆すには、大変な時間と労力が必要だろう。
ではロケフリの製造元であるソニー自身が、このようなハウジングサービスを始めたらどうなるだろうか。これはおそらく、認められないだろう。
ロケフリというハードウェアは、ソニー固有の技術で作られている部分も少なからずあるはずだ。現在は同じようなことができる他の製品もあるが、コーデックやサーバーの仕組みなどに特許案件があり、汎用の技術とは言い切れない。
いくら市販されているとはいえ、自分で作って売っているハードウェアに対してハウジングサービスを行なうという論法では、録画ネットと図式が同じである。もっとも、ソニー自身がこのようなサービスに乗り出すとは考えられない。彼らがその気になれば、そんな回りくどいことをしなくても自力でメディアを持てるわけだし、むしろコンテンツの供給側の立場でもある。
一方でテレビ局がソニーに逆らえないのは、放送機材がほとんどソニー製だからだという論点があるが、これはまったく的外れである。これはおそらく放送業界の内部を知らない人が言い出したことだろう。
ソニーにとってテレビ局は、「高い機材を大量に買っていただける上得意のお客様」である。立場から言えばテレビ局のほうがソニーに対して、よっぽど無理強いができる立場にある。もし「逆らうと放送機材売ってやらんぞ」などという営業マンがいたら、月の裏側までぶっ飛ばされるであろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR