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次世代DVDが起爆しない5つの理由小寺信良(2/3 ページ)

» 2007年07月09日 10時20分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 それにはまず、レンタル店の果たす役割を過小評価してはならない。DVDビデオが売れ始めた時、TSUTAYAなどの大手レンタルが従来のビデオに加えてDVDの棚を作り、プレーヤーも一緒にレンタルしていた。DVDと次世代DVDの差は、アナログテープとDVDの差のように、圧倒的なメディアチェンジを果たすわけではない。それには、自分の中で価値観を構築できるかが重要である。

 その価値観を作るのは、体験だ。まずは買って試してください、ではあまりにもリスキーである。ここはハードウェア無料レンタルでもなんでもやって、まずは買う前に自宅で試せる機会を多く創出しなければならない。

なんだかわからない

 第3の問題は、やはりフォーマットのわかりにくさである。それはベータマックス対VHSのようなわかりやすい図式に加えて、DVD時代の規格の乱立でわけわからなくなったことのミクスチャーとも言える現象だ。

 結局あんた達は何が違うの? という根本的なところが、一般ユーザーには全然伝わっていないのである。両方ともHDが録れる。容量はちょっと違うみたいだ。で、他には何が違うの? というところに対して、実家の母にもわかるような説明が誰もできないのである。もっともそれができるぐらいならば、とっくに決着が付いている問題ではあるのだが。

 どちらでもいいのであれば、どちらかを選べばいい。だが市場はおそらく、どちらかが勝ち、どちらかが負けると思っている。誰しも負け組にはなりたくない。全部がそのまま進む、という選択肢は、DVD時代にスーパーマルチドライブの登場によって実現したが、次世代DVDでは未だその解が現われていない。

 そもそも規格の乱立で大いに悩むはずだったレコーダー市場全体が、売り上げで頭打ちになってきている。ここ半年のニュースリリースを注意深く読まれているとお気づきだろうが、次世代に限らずレコーダの新作というのが目立たなくなった。一時は各メーカーが交代で新機種を出すので、毎月新モデルが市場に出るといったこともあったが、あの盛況の時期から考えれば、今の市場は停滞してしまっている。

 昨年12月から地デジのカバーエリアが拡大したこともあり、まだ伸びしろはあるはずなのだ。だが市場に動きがないことを見ると、明らかに買い控えが起こっていると見るべきだろう。

別に見なくてもいい

 そこから連想される第4の理由は、コピーワンスである。コピーワンスがあるから、ということに加え、コピー回数緩和の方法が決着せず、長引いているところがますます停滞感を産む結果となっている。

 つまりこの結論の出ない宙ぶらりんの状態が続くことで、メディアにテレビ番組を記録することに関して、消費者は泥棒のように扱われているのじゃないのか、という感覚を植え付けられつつあるのだ。これは音楽業界が踏んでしまった犬のシッポと全く同じである。

 レコード会社はCCCDで大失敗した。CDの売り上げが伸びないのをデジタルコピーのせいにして、客を泥棒扱いした。このときに消費者に産まれた敵対感情は、レコード会社に正しく向けばいいのだが、多くはアーティストに向けられることになった。アイツはケチくさい、二度と買うもんか、というルーチンを産む。このレコード会社のCDを買わないというのは面倒だが、このアーティストは買わないという方法はわかりやすいからである。

 今音楽業界は、DRMフリーへの転換を図ろうとしている。昔の平和だった状態に戻したいのだ。映像業界も、セルコンテンツはカジュアルコピーができない程度に、コピーコントロールが上手く働いていた。だがテレビのコンテンツは、私的利用の範疇においては最初からコピーフリーだったという事実は、変えられない。コピーフリーではなくコピー可能回数を増やすだけで、本当に元の状態に戻るだろうか。

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