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MSの「Midori」OSの実態は?

» 2008年08月01日 15時14分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 元Microsoftブロガーで現在はFastCompanyの映像記者をしているロバート・スコーブル氏は、Microsoftの新OSとうわさされる「Midori」について強い意見を持っている。

 「Microsoftが本当に、ビル・ゲイツが死ぬ(多分20〜40年は先だろう)前にOSを完全に書き換えるなどと、信じる方がマヌケだ」。ロバートは7月29日のブログにこう記した。なぜかわたしのRSSリーダーには31日になるまでこの記事が出て来なかった。

 ロバートが言っているのはいわゆる非Windows OSのMidoriのことで、29日に大きく報じられ、31日にも記事が出た。SDTimesのデビッド・ワージントン記者はMidoriについてリークされた文書を入手し、わたしはその解説をコラムに書いた。デビッドの記事は第1回第2回に分かれている。

 記者というのは「『Microsoftは新しい、完全に刷新されたOSに力を入れており、世界中の問題はこれですべて解決できる』という見せ方を好むものだ」とロバートは言う。「誓ってもいいがそんなことはない。少なくとも、わたしの10カ月の息子が10歳の誕生日を迎える前にそのようなものが商品化されることはない」

 ロバートは確信に満ちている。しかしそれは、いわゆる新OSについての文書を手にしたデビッドも同じだ。2人とも正しいということはあり得ない。いや、あり得るだろうか。そう、あり得るとわたしは思うのだ。

 デビッドは31日、WindowsからMidoriへのMicrosoftによる移行計画について記事を書いた。わたしが見るところ、これ(記事ではなく移行計画のことだ)は複雑に入り組んだものに思える。問題は、SDTimesの記事によれば、OSを移行させるためのソフトウェアアーキテクチャについて、リークされたMicrosoftの文書が複数の選択肢を提示していることだ。もし29日の時点でこの情報を知っていたら、わたしのMidoriに対する姿勢は軟化していただろう。

 わたしは先に、このプロジェクトは野心的過ぎるのではないかと深刻な懸念を表明した。2番目の記事を読んだ後はこう考えるようになった。MidoriはOSプロジェクトと言えるようなものではまったくないかもしれないが、まだ初期段階にある何かもっと大きなものかもしれないと。もしそうだとすれば、Microsoftが完全に新しいOSをいつリリースするかという点について、ロバートの見方はまったく正しい。

 しかしさらにつじつまが合うのは、わたしは29日のコラムでもほのめかしていたのだが、クラウドOSだ。デビッドの記事の根拠となっている文書を見ていないので、ここにはわたしの推測も入る。最初の記事を読み、あらためて読み返してみると、Midoriでは.NETが明らかに極めて重大な役割を持つと解釈できる。文章から読み取れるよりもはるかに大きな役割だ。.NETはMicrosoftのサービスを結び付けるものだ。

 Midoriの責任者とされるのは誰か。技術戦略担当上級副社長のエリック・ラダー氏だ。しかし彼は別のことで有名だ。2002年、Business Weekはエリックのことを「.NETの総帥」と紹介した。わたしは「.NETエバンジェリスト」としてエリックを記憶している。

 Midoriの実態はこんなものだろうとするロバートの解説を読んで、わたしはかなり合点がいったと言わざるを得ない。ロバートの説なら、デビッドの記事を読んでわたしが疑問に思ったことがほとんど解消する。ロバートは次のように記している。

 「OSを完全に.NETの中で構築することにより、.NETのどこが不完全なのかを発見できる。これを使って.NETチームのバグを直し、新OSの基盤として十分使えるようになるまで改善する。.NETが真のOSレベルのプラットフォームおよび言語となるために必要なことをすべて繰り返すには10年はかかるだろう。Microsoftがこれを、Windowsのバージョンとして打ち出すと想像してみてほしい。すべて.NET上で構築され、新しい種類の.NETアプリをホスティングしているOSがあったら役に立つのではないだろうか」

 確かに。

 わたしはデビッドの記事をけなしているのではない。リークされた文書を入手して記事にしたのは手柄だ。しかし結局のところこれはリークされた情報であり、そこには文脈が存在する。ロバートの解釈で、デビッドの記事はつじつまが合うとわたしは思う。マヌケなのはこの文書をリークした人物だ。見つからないよう、逃げた方がいい。ただし隠れるなら普通の場所がいい。その方が、見つかりにくいものだから。

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