Googleの新ブラウザChromeはMSの牙城を崩せるか?
MicrosoftがIE 8のβ2を発表した1週間後、Googleが人気作家によるマンガを使って新ブラウザを紹介した。
検索広告市場を支配する米Googleの勢いを食い止めるべく、米MicrosoftがInternet Explorer 8(IE 8)のβ2を公開してから1週間。今度はGoogleが反撃に出ようとしている――。そう、マンガを使って。
ただし、これはただのマンガではない。かねてGoogleが開発しているとうわさされてきたオープンソースブラウザ「Google Chrome」をマンガで紹介しようというユニークな試みだ。技術情報サイトのGoogle Blogoscopedはこの情報をいち早くキャッチし、人気マンガ家スコット・マクラウド氏の手によるこのマンガを9月1日、オンラインに掲載した。
Googleはその後、ブログ投稿において、ChromeのWindows版のβを2日に公開する予定であることを認めている。Mac版とLinux版は追って公開される。
このマンガには、Googleのソフトウェアプログラマーたちがキャラクターとして登場し、今日のWebブラウザの現状を嘆いている。今やWebでは動画や高速アプリケーションへの対応が求められており、IEやFirefox、Operaといった現行のWebブラウザでは対応できなくなっているというのだ。
GoogleのエンジニアはChromeについてブログ投稿で次のように記している。
「われわれはオンラインで非常に多くの時間を費やしている。そのうち、“もし今ある最高の要素を元にわれわれがゼロからブラウザを開発すれば、どのようなものを完成させられるか”ということを真剣に考えるようになった。既にWebはシンプルなテキストページの時代からリッチでインタラクティブなアプリケーションの時代に進化しており、ブラウザを徹底的に見直す必要があるということにわれわれは気付いたのだ。今、本当に必要とされているのは、ただのブラウザではなく、WebページやWebアプリケーションのためのモダンなプラットフォームだ。われわれはそう考え、それを開発することにした」
エンジニアらによれば、ブラウザは、安定性があり、高速で、セキュアで、クリーンで、使い勝手が良く、オープンソースである必要がある。これらの目標を達成するため、Chromeでは複数のタブを複数のプロセスで処理し、たとえいずれか1つのタブがビジー状態になったりクラッシュしたりしても、残りのタブで作業を進められるようになっている。
この点については、詳しくかみ砕いた説明も可能だが、Googleのソフトウェアエンジニアのブレット・ウィルソン氏は次のように簡潔に説明している。
「ブラウジングの際は、常にプロセスを作っては破棄するようになっている。そのため、深刻なメモリリークが発生しても、そう長い間、影響は及ばないはずだ。いずれそのタブを閉じれば、メモリは開放されるからだ」
ChromeブラウザはレンダリングエンジンとしてオープンソースのWebKitを利用している。WebKitはGoogleのモバイルOSであるAndroidの開発チームが使っているものだ。さらにGoogleはJavaScriptのパフォーマンスを高速化するため、デンマークのソフトウェア企業V8にJavaScriptの仮想マシンを開発させている。さらにChromeブラウザにはGoogle Gearsが統合され、ユーザーはChromeをオフラインでも活用できる。
技術的な詳細については、このマンガに目を通すか、あるいはレイフ・ニードルマン氏が投稿した技術概要を参照していただきたい。
われわれがまた新たなWebブラウザを必要としているのかどうかは、わたしには分からない。それにGoogleは、オープンソースブラウザのMozillaプロジェクトと検索に関する提携を延長したばかりではなかっただろうか? だが、もしChromeがほかのブラウザよりも優れているということなら、わたしはすぐにでも方針を切り替える。この大作マンガを読む限りでは、ChromeはIEやFirefox、Operaなど、今あるどのブラウザよりも優れているようだ。
もしChromeの目的が本当にユーザーをIEから引き離すことであるのなら(これまでのところ、どうにかそれに成功しているのはFirefoxだけだ)、Googleには難しい仕事が待ち構えていることになる。何しろ、MicrosoftはひとえにPCメーカーとの抱き合わせ販売のおかげで、検索市場におけるGoogleと同様、ブラウザ市場で70%以上のシェアを誇っているのだから。
Googleが勢いを増したいのなら、Chromeを特別な存在にする必要があるだろう。そしてもしChromeが本当に大きく成長するようなら、MicrosoftなどWebサービスを手掛ける各社は大いに警戒すべきだ。「Google」に「検索」に「Webアプリケーション」に「ブラウザ」とくれば、答えは1つ。「インターネットの独占」だ。
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