先延ばししている仕事に取り組む(1)平本メソッド・ピークパフォーマンス実践シリーズ(2/2 ページ)

» 2006年06月28日 00時00分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]
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優先順位を決める

 2つ目のポイントは「優先順位を決める」ことです。先延ばししている人は、大抵やりたいことが多すぎます。

 優先順位を決める例として、こんなエピソードがあります。

 「ダイエットしたい」と、ずっと言い続けている女性がいました。ただ、「ダイエットはしたいけれど、おいしいものを食べるのも好き」とも言います。さらに、よくよく聞いてみると、おいしいものを食べることそのものよりも、友達といい時間を過ごすことが大事らしい。彼女にとっては、ダイエットよりも、おいしいものを食べながら友達といい時間を過ごすのが大切なのです。そして彼女にとって、友達といい時間を過ごすには、お茶とかお酒じゃなくて“おいしいものを食べながら”という点が重要なのです。

 そこで、「あなたにとって、ダイエットと友達とのいい時間と、どちらかといえばどっちが大事なのか」と聞くと、「友達とおいしいものを食べながら、いい時間を過ごすほうが大事」と答えます。結局、彼女にダイエットを諦めさせました。

 本人が、「おいしいものを食べずにいい時間を過ごしつつ、ダイエットもしたい」というなら、「ダイエットの先延ばし」を撃退しますけれど、「おいしいものとダイエットと、このままなら両方とも失います。片方なら選べるなら、どっちを選びますか?」と聞くと、彼女は「私はおいしいものを取ります」と答えました。

 こんなふうに、自分の中でやらなくちゃいけないと思っていることでも、世間が「ダイエット、ダイエット」といっているから、その気になっているだけで、優先順位が下のこともあるのです。

スモールステップで取り掛かる

 3つ目のポイントは、「期限や量が明確でなく、大きすぎるものはスモールステップにする」ということです。

 例えば、「○○言語を学ぶ」「エクセルの使い方を学ぶ」、などの場合、実はテーマが大きすぎます。それをスモールステップに分けていきます。「○○言語のこの部分を学ぶ」とか、「よく使われるこの機能だけを、まずマスターする」というようにしていきます。あるいは「それをマスターするために、○○言語の本を買う」とか、「セミナーに行く」など、具体的にします。ただ、「セミナーに行く」というのも、まだ大きすぎて気が重くなってきますね。ですから、「セミナーの前の説明会に行く」、「パンフレットを取り寄せる」などにします。さらにその手前、まず「インターネットでそういう講座があるかどうかを調べる」だけに目標を設定します。このように、スモールステップにすると行動しやすくなります。それこそインターネットの時代ですから、本当に5分10分で調べられる。仕事の休憩時間にちょっと調べられるぐらいを目標にするのです。

誌上セミナー

平本 リストの中で漠然としすぎて、大きすぎるものはありますか?

斎藤 「部下の今後の行動計画の指針を立てる」というのがあります。

平本 その部下は、何人ですか?

斎藤 これに関しては1人です。

平本 行動指針とは、何のためにですか?

斎藤 彼に、長期的なものではなくて、短期的な目標を提示してあげたいんです。

平本 どれぐらいの短期ですか?

斎藤 そこをまだブレイクダウンしていないんですが、少なくとも1カ月。できれば、一週間単位。「今週はこれをターゲットにやりましょう」というのを出したいな、と思っています。

平本 斎藤さんから出したほうがいいですか? 彼から引き出したほうがいいですか?

斎藤 そこも悩むところです。

平本 その話は本人にされましたか?

斎藤 まだしてないです。

平本 それでは例えば、「あなたの、1カ月単位、1週間単位の目標を出してあげたいんだけど、僕のほうである程度出したほうがいいのか、君の方から持ってきてもらったほうがいいのか、ちょっとその話をしないか」ということを「話すこと」、は目標にできますか?

斎藤 そうですね。

平本 こんな風にスモールステップにしていきます。「部下の目標設定」というと、すごく大きな話です。長期目標なのか短期目標なのか、自分が出すのか部下に出してもらうのか、まずは具体化です。ここでさらに、スモールステップ。今回は「そのことで話し合う」、これを最初のステップにします。自分から言ってもらうのか、斉藤さんが出したほうがいいのか、それについて話す。これを最初のステップにしてください。これなら5分か10分でできますよね。

斎藤 できます。戻ってすぐできます。

平本 「僕から毎週出していくなら出していくし、君から出すならそれでいいし、どうしようか」と聞いたら、どっちから出そうですか?

斎藤 彼から出そうな気がします。

平本 「じゃあ、君が出すということで行こう。ところで、週単位でいこうか、月単位でいこうか? 週単位で行こう。じゃあ、毎週、月曜日○時に、こういうテーマでいきたい、というのを持ってきて」と続きますね。そうしたら、結果的に「部下の目標設定」まで行けますね。こんな風に、まず、最初の「話をする」を目指すんです。最初から最後のところを目指してはいけません。できますか?

斎藤 もう終わった感じがします。

平本 終わっていませんよ、やらなくてはいけませんからね(笑)。でも、これだったらそんなに時間はかかりませんよね。


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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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