今や、ビジネスにおいても必須のツールとなったメール。顧客とのやり取りから、社内の連絡まで、ほとんどメールで行っているという人も増えてきていると思います。1日に受け取るメールの数が数百通という人も珍しくありません。いかに大量のメールを効率よく処理するか――が、現代のビジネスマンに必須のスキルといってよいでしょう。
ところが意外に、メールソフトをデフォルトの設定のまま使っている、という人がまだまだ多くいるようです。そこで今回はそんな方に、大量のメールを効率よく処理する基本テクニックをご紹介したいと思います。
特に大量のメールを処理するという視点で、コンセプトがはっきりしているメールサービスとしてお勧めなのが、Googleが提供している「Gmail」です。ただ、Gmailは紹介制のサービスですので、会社のメールをGmailに全部転送して処理できるという人はまだまだ多くありません。ここではGmailの“コンセプトだけ”を参考にしてみましょう。
まずお勧めしたいのは「受信トレイをメールの保存場所ではなく、処理待ちメールトレイにする」ことです。これまでのメールソフトのデフォルトの状態では、受信トレイが保存トレイの前提で設計されているものがほとんどですので、過去のメールも全て受信箱に保存しっぱなしの人が意外に多いようです。そういう方は、まずそのやり方から変えてみてください。
Gmailにおけるメールの分類の基本は「受信トレイ」と「すべてのメール」の2つです。新しいメールは受信トレイに届き、処理が終わったメールは「アーカイブ」ボタンを押すことで「すべてのメール」に移動させる――と、これだけです。
そこで、普通のメールソフトをお使いの方はGmailを真似して、受信トレイの下に「すべてのメール」という名前でフォルダを作ってみましょう。あとはGmailと同様、すでに読み終わった過去のメールを「すべてのメール」に移動させてください。今後も受信トレイのメールは処理が終わったら「すべてのメール」に移動させることになります。
一見、メールを「すべてのメール」に移動させるという手間が増えるので、効率が悪くなるように思われるかもしれませんが、騙されたと思って試してください。作業待ちのものと、処理が済んだものを明確にフォルダで分けるという作業をするだけで、皆さんのメールの処理効率は倍以上変わってくるはずです。
「受信トレイ」と「すべてのメール」のルールを決めたら、あとは受信トレイが空になるようにメールの処理に集中しましょう。受信トレイからメールを移動するかどうかを判断する上で、簡単な指標となるのは、返信が必要なメールと、不要なメールの二種類に分けるという点です。返信が不要なメールというのは、基本的にメールを読んだ段階で役目を終えているメールですから、その時点で「すべてのメール」に移動させてしまいましょう。CCで届いたメールや、対応の必要ない連絡事項などが対象ですね。
返信が必要なメールについても、その場で即答できるものについては即答することで、「すべてのメール」に移動できます。もちろん返信は不要でも、そのメールを元に「何らかの作業が発生するメール」もあると思いますから、そういったものは受信トレイに残しておき、作業が終わったら受信トレイから「すべてのメール」に移動させるようにします。この簡単なルールを決めることによって、単純に「受信トレイを空にする」ことに集中できるようにするというのがポイントです。
受信トレイからメールを出すように心がければ、返事が必要なメールがないかとか、やり残した作業がないかというのを、受信トレイのメールの量で直感的に判断できるようになるわけです。山崎さんの仕事術インタビューでも紹介されていましたが、やるべきことを自分にメールするというのも、この手法の延長として有効です。つまりメールの受信トレイがGTDでいうところのアクションリストになるわけです。
「受信トレイを空にするよう頑張る」とはいっても、当然メールにはさまざまなものがあります。受信トレイを空にすることだけを目標にして、重要な仕事をあとまわしにして、私用のメールや、重要度が低いのに返事に時間がかかるメールを書く、というのは非効率です。そこで、勤務時間外に処理した方がいいメールや、後回しでいいメールのリストを作って、そこにそういうメールをどんどん移動するようにしてしまいましょう。
Gmailでは「スター」と「下書き」を、「あとまわしリスト」として使うことができます。たとえば、今すぐに処理できないけど作業が必須なメールに「スター」をつけておけば、そのメール自体を「すべてのメール」に移動しても後で簡単に探すことできます。また、私用のメールなど重要度が低いものについては、返信ボタンで一度下書きを作り、そのまま下書き保存してしまいましょう。当然、相手のメール自体は受信トレイから「すべてのメール」に移動させます。
そうすることで、
という形に自分のメール処理をフロー化してしまえるわけです。
一度、この流れさえ身についてしまえば、大量のメールが来ても全く怖くありません。受信トレイのメールの数が少なければ、緊急のメールが来てもすぐに気づくことができますし、受信トレイを眺めることで他の急ぎのメールを思い出すことも容易です。かといって、「スターや下書きを定期的にチェック」すれば、後回しにした飲み会の返事などを忘れることもありません。
なんといっても、自分が大量のメールをコントロールできているという感覚を持てれば、GTDでいうところのストレスフリーな状態になれます。受信トレイを全部のメールの保存トレイにしている人は、騙されたと思って是非試してみてください。
NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.