「○○が流行っている」「○○に注目が集まっている」――といったニュースをデータから読み解く方法を3回にわけてお伝えします。まずはサイトのアクセス数に注目してみましょう。
先週の記事で「初めて出会ったブログの信頼度を調べる3つのテクニック」をご紹介しました(9月6日の記事参照)。こういう記事を書くと、いかにもブログは信用できなくて、企業のニュースサイトは信用できると受け取られてしまいがちですが、インターネットやブログの登場によって改めて問われているのは、実は企業側の情報発信ではないかという見方もあります。
典型的な例は、「○○が流行っている」とか「○○に注目が集まっている」といった新しい製品やサービスを取り上げているニュースです。
もちろんこういった表現は、ある程度の根拠を元に使われているのだとは思いますが、視聴者や読者の側からすると、本当にその製品・サービスが多数の人に注目されているのか、それともどこかの企業がブームを仕掛けているのか、はたまたその記事特有のオーバーな表現なのかというのは一読しただけではわかりません。
そこで、デジタルワークスタイルの視点では、いくつかのデータに着目してみました。「話題の製品」が本当に話題になっているのか、そうしたニュースを読み解くデータを解析するのに役立つツールやサービスを、3回に分けてご紹介したいと思います。
3回に分けてお伝えするツールやサービスで読み解けるデータは以下の3つです。
まず今回は「Alexa」で、サイトのアクセス数をチェックする方法をご紹介しましょう。
インターネット上のサービスのトレンドを調べる場合に手軽なのが、アクセス数を表示してくれるサイト「Alexa」です。残念ながらサイト自体は英語なので、ちょっと敷居が高く見えるかもしれません。
ただ、使い方は簡単で、「Traffic Rankings」を選択して調べたいサイトのURLを検索ボックスに入力するだけ。サイトの訪問者数やページビューのグラフを期間単位で表示することができます。
例えば、ライブドアの場合はこんな感じになります。
また、今週上場するmixiの場合はこんな具合です。
気を付けてほしいのは、このデータは「Alexa Toolbar」などのAlexaにアクセスデータを送信するツールを利用している人達が元になっていると言う点です。つまり、そういった特殊なツールを使う人の動向が反映されやすい傾向にあり、デフォルトの設定のままでPCを使っているような、いわゆる一般人の動向はあまり反映されないと考えたほうがいいでしょう。
mixiの例ですと、2006年の頭に一気に増えて、そこでピークを迎えているように見えます。しかし、実際の登録者数は2005年12月の200万人(2005年12月7日の記事参照)から、2006年7月には500万人を突破(2006年7月26日の記事参照)と倍以上になっています。アクティブログイン率もそれほど変わっていないようですか、実数を反映するとすればAlexaのグラフももう少し右肩上がりになっていても良さそうです。あくまでそういう偏りのあるデータだと思って使うべきでしょう。
とはいえ、サービスの傾向をグラフにできるだけでも十分役に立ちます。さらに、Alexaの面白さは、このグラフを他のサービスのグラフと比較することができる点にあります。1つのグラフだと伸びているか落ちているかぐらいしかわかりませんが、グラフを比較することで複数の「注目」サービスのどちらの勢いがありそうか――といったことも見えてきます。
やり方も簡単で、グラフの下の「Compare Sites」に、比較したいサイトのURLを入力するだけです。先ほどのmixiとlivedoorのグラフを重ねるとこんな感じになります。
2005年に業界の風雲児であったライブドアに代わって、mixiが急速に伸びてきていることがわかります。こういったアクセスの傾向は、日本のサービスであれば、何となく肌感覚で流行っているかどうかわかるかもしれませんが、馴染みのない海外のサービスの動向を調べるときには特に威力を発揮します。
試しに、今年大注目のYouTubeと“英語版mixi”にあたるMyspaceのグラフを重ねてみましょう。
海外のサービスで「流行っているらしい」という記事を見た場合には、こうやってAlexaでグラフにしてみると、ほかのサービスに比べてどれぐらい流行っているのか――が一目瞭然と言うわけです。
さらに「2つのグラフ比較じゃ物足りない!」という方にお勧めなのが「Alexaholic」です。このツールを使えば、同時に5つのグラフを比較することができます。
最近話題になった日本発の動画共有サイトを5つ比較してみるとこんな様子です。
もちろん、Alexaのデータには先ほども書いたように偏りもありますし、このAlexaの便利さを逆手に取ってアクセス数を水増しするツールも現われているようですから、あまり頼りすぎるのは危険です。
ただ、今まで私たちユーザーが知りえなかった情報を、無料でしかも手軽に入手できるわけですから使わない手はないと思います。いろいろなサービスのURLを入力してみると面白い判断材料が手に入りますので、ぜひ試してみるといいでしょう。次回は、検索回数でニュースを読み解く技術をご紹介します。
NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com」
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