家庭・SOHO用途の比較的小型のシュレッダーにも、5000円程度から3万円台までと大きな価格差がある。この違いはどこに反映されているのだろうか。
個人情報保護法の影響などによって、セキュリティに対する意識が高まっている。家庭や小規模オフィスでもシュレッダーが必要となる場面が出てきた。
しかし、シュレッダーの家庭への進出に伴い、子供がシュレッダーに触れる可能性も高まる。2006年には幼児がシュレッダーで指を切断する事故が起きた。これを受けて経産省では「電気用品の技術上の基準を定める省令及び同省令第2項の規定に基づく基準の改正に関する意見募集について」と題してシュレッダーの安全基準について提案し、3月29日までパブリックコメントを募集している。
この事故を受けて、メーカー各社も経産省の提案を踏まえたり、独自の安全基準を定めるなどして従来機種よりも安全性を高めた新製品を発表した。具体的には、それまでのモデルよりも投入口の幅を狭めたり、投入口から刃までの距離を4センチ以上にして指が刃に届きにくい構造にした製品が多い。そのほか、刃のついた部分とダストボックス部が外れていると作動しなかったり、作動を止めるスイッチを分かりやすい場所に付けたりという工夫をした機種もある。
今回は、家庭やSOHOで使うことを想定して、以下のような条件を満たす電動のシュレッダーを探してみた。
上記の条件をすべて満たすシュレッダーでも、価格は5000円程度から3万円台までの開きがある。その違いはどこにあるのだろうか。
「耐久性を考え、使う頻度によってお勧めする機種が変わってくる」と話すのはフェローズ。1日10〜20回程度ならライトユーザーとして低価格な機種、50〜100回使うならヘビーユーザーとして上位機種を勧めたいという。
このほか、1度にカットできる紙の枚数やCD-ROMのような硬いものも切れるかどうかという“パワー”や、「定格時間」と呼ばれる連続動作時間も価格によって差がつく部分だ。
フェローズでは、CD-ROMを裁断するなら2007年2月に発売した「M-450Cs」などがお勧めだという。最大細断枚数は7枚で、紙は2×8ミリにクロスカットする。カットの細かさもこの機種の特徴だ。連続使用時間は8分で、価格は3万6750円。
同じくCD-ROMを裁断可能なタイプとしては、シルバー精工が3月15日に発売する「CS56D」がある。こちらは最大細断枚数は8枚で、紙は5×33ミリのダイヤモンドカット。連続使用時間は10分で、価格は1万8900円。同社はこれまで業務用の大型シュレッダーを販売していたが、この機種で家庭・SOHO用途に参入した。
紙を細長く切るストレートカットは、屑の量が多くなる、復元が比較的容易であるなどのデメリットがあり、最近販売されたもので採用している機種は少ない。ストレートカットに加えて、一定距離をおいて縦にもカットしているのがクロスカットで、現在の主流だ。どのくらいの距離を置いて縦にカットしているかは機種によって違うが、3〜4センチ程度が多い。また、CS56Dでは、切り屑が横に長いひし型になるダイヤモンドカットを採用している。
切るのは紙だけと決まっていて、CD-ROMなどを裁断できなくてもいいのなら、もっと安価なモデルもある。ナカバヤシが2006年11月に発売した「NSE-711」は、店頭販売価格が7000円程度。カットできるのは紙だけで、最大細断枚数は5枚だが、連続使用時間が12分と価格の割には長めなのがウリだ。カットサイズは4×36ミリ。
もっと安いモデルが、アイリスオーヤマが2006年12月に発売した「P5G」。同社のオンラインショップでの価格は4910円。カットサイズが4×36ミリで、最大細断枚数が5枚。安さの原因の1つは、連続使用時間が3分と短めであることだ。「安全のため、連続使用してモーターが加熱すると自動的にストップするが、これが3分程度になる」(アイリスオーヤマ)
ここまで機能と価格を軸に見てきたが、デザイン面ではどうだろうか。シルバー精工のCS56Dは、「ココチノヨイオフィス」をテーマとする同社のブランド「conof.(コノフ)」の第1弾。今後、女性をメインターゲットにしたオフィス製品を販売していく予定だ。
このような“ブランド家電”の先駆け、リアルフリートの「amadana」シリーズにもシュレッダーがある。2004年11月に発売を開始したロングヒット商品「DS-106」だ。「当時はパーソナルタイプのシュレッダーはあまりなかったので、リビングに置いてもなじむデザインを考えた」(リアルフリート)。また、細断した紙を貯めるボックスが外から透けて見えるが、ボックスの上部になるほど“透け度”が大きくなり、ゴミの捨て時をわかりやすくするなど、細かな工夫がある。
機能面では、当時からストレートカットではなく4×40ミリのクロスカットを採用していた。最大細断枚数は5枚、連続使用時間は5分だ。今回紹介した中で唯一、2006年の事故以前の製品だが、事故を受けて、希望するユーザーには紙の投入口を5.3ミリから3.0ミリに変更する部品への交換を受け付けている。
利用する機種を選ぶ際に、まずCD-ROMやDVDをカットする必要があるかどうかを考えよう。カットしたいならパワーのある上位機種が必要だ。
紙だけのカットでよければ、処理したい紙の量が問題になる。これには同時に処理できる紙の量を示す最大細断枚数や、連続使用時間が参考になる。フェローズは細断速度と最大細断枚数と連続使用時間の3つを利用した独自の計算式で「処理能力指数」を算出し、自社製品についてこの指数をWebサイトで公開している。自分の欲しい機種について独自にこれを計算してみるのも参考になりそうだ。
もちろん、自宅に置くならデザイン性は欠かせないと考えるユーザーもいるだろう。amadanaのDS-106は他機種と機能だけを比較すれば値段は高めだが、デザインに惚れこんでしまい「同じシリーズで家電を揃えたい」というユーザーは考えてみよう。
メーカー | フェローズ | シルバー精工 | ナカバヤシ | アイリスオーヤマ | リアルフリート |
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型番 | M-450Cs | CS56D | NSE-711 | P5G | DS-106 |
発売時期 | 2007年2月 | 2007年3月 | 2006年11月 | 2006年12月 | 2004年11月 |
価格 | 3万6750円 | 1万8900円 | 7000円程度 | 4910円 | 1万9950円 |
最大細断枚数(A4) | 7枚 | 8枚 | 5枚 | 5枚 | 5枚 |
CD-ROMのカット | ○ | ○ | × | × | × |
紙のカットサイズ (特記ない限りクロスカット) |
2×8ミリ | 5×33ミリ (ダイヤモンドカット) |
4×38ミリ | 4×36ミリ | 4×40ミリ |
連続使用時間 | 8分 | 10分 | 12分 | 3分 | 5分 |
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