独りでも寂しくない“準公開環境”で自分を磨け樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

人間は社会的動物だから、独りでポツリとしていると、すごく寂しい。だから家族を作るし、友達とわいわい騒ぐ。でもわいわいしすぎると、思考がまとまらない。特に会社だと仕事に追われてじっくりと考えることが難しい。ではどうするか──。

» 2007年08月09日 14時32分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 人間は社会的動物だから、独りでポツリとしていると、すごく寂しい。これは新人であっても、ベテランであっても同じだ。だから家族を作るし、友達とわいわい騒ぐ。会社の成り立ちも、やはり社会的動物の行動パターンから来ている。一緒にいると安心するのだ。

 とはいえ、考えが最もまとまらないのも会社だった。目の前にわんさか溜まっている問題や、土手の水漏れを穴に突っ込んだ指で止めている風の仕事もあるのだ。色々な場所で思考を重ねてきた筆者だが、会社では十分な思考ができなかった。

適度な距離感のある“準公開環境”を探せ

 だからこそ、“準公開環境”を大切にしてきた。Biz.ID読者にも、自分の準公開環境を探して活用することを勧めたい。ちなみに“準公開環境”とは、平たく言えば人が見ている、あるいは見ている可能性がある場所のこと。しかも、会社のように内線電話からの“横槍仕事”に悩まされず、机に突っ伏して寝ても文句を言われない──言い換えれば周囲の人と適度な距離感のある場所だ。

 他人がじっくりと“見守ってくれている”準公開環境では、社会的動物たる人間としては“安心して”集中できる場所でもある。たとえば喫茶店では、テーブルごとに適当な距離が有るとはいえ、そこは他の人から見える場所にある。筆者はそのような場所で思考し、ノートに発想や作戦を書くのが好きだ。特にドトール、ベローチェ、プロント、スターバックス、タリーズなどのコーヒーショップである。

コーヒーの価格例(最小サイズ)
コーヒーショップ ブレンド エスプレッソ
ドトール 180円 180円
ベローチェ 160円 160円
(ただし店舗によっては提供していない場合も)
プロント 200円 200円
スターバックス 280円
(本日のコーヒー)
290円
タリーズ 290円
(本日のコーヒー)
290円

 このような準公開の場所で、しっかりと思考を磨くこと。それが、思考する自分を作り上げる。仕事を終えて、そのまま飲み会ばかりよりも、独りじっくりとノートに思考を書き留めていると、渋い表情ができてくる。その姿がとってもセクシーだと言う人もいる。

 準公開環境はどこにでもある。通勤の電車の中、出張の列車、極端にいえば、歩きながらICレコーダに思考を録音していくことも準公開環境での作業だ。少々雰囲気が堅いが図書館も準公開環境だろう。オススメは長時間に及ぶフライトの機内だ。ボタン1つでコーヒーなり、お茶なりが出てくる。しかも笑顔のキャビンアテンダントが持ってきてくれるのである。これを利用しないでなんとするか。

ドトール単位

 筆者たち団塊の世代が新人だったころは、高価な喫茶店ほど長く滞在するのが難しかった。飲み干すとコーヒーカップを店の人に奪われたものである。その点、近年のコーヒーショップは優れている。筆者にとって、真の思考環境の革命をもたらしたものは、ドトールだったと言っていい。筆者は仕事でも、プライベートのアイデア出しでも徹底的にドトールを活用した。ドトールは新しい文化だった。

 我が営業チームには「ドトール単位」という言葉があった。筆者は、部員の誰かがめざましい功績を上げると、「すごい。これは部長表彰で2ドトールだ」と叫んだものだ。つまりドトール2杯を部長のおごりだということだ。

 また部内での賭けも、「ようし、この注文が決まるかどうか、3ドトールを賭けよう」なんてやっていた。そのうち、みんなにドトールばかり10杯も借りてしまった。部員がドジをやったときも、ペナルティは「5ドトール、みんなにごちそうだ」と勝手に決めたりしていた。

 また外での待ち合わせは、客先近くのドトールで待った。万が一集合に遅刻してくる者がいると喜ばれた。遅刻した者が「ドトールの費用を全部見る」ことになっていたからだ。

 毎日2杯から3杯のコーヒーをドトールで消費してきた。いま考えれば、すごい金額だ。しかし、出したアイデアもものすごい。ドトールで得た着想は十数冊分のノートに匹敵する。単にコーヒーを飲むのではなく、思考に耽って、思考を書き留める。そんなすごし方も1つのアイデアだ。

今回の教訓

エスプレッソ1杯──250円、ミックスサンド1つ──350円、世界を変えるアイデア──Priceless.


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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