チーム全員の状況をリーダーが詳細に把握するのは無理があります。「ペア・スクリプト」を作成して、それをリーダーが読むことで、短時間で効率的にチームの進捗を把握できるようになります。
チームの状況をおおまかに把握するには?
コツ:「ペア・スケジューリング」をもとにした「スクリプト」をチームで共有する
チーム全体の進捗状況を把握し、メンバーに対して的確な指示を出すことはリーダーに求められる役割の1つといえます。
とはいえ、すべてのメンバーの状況を誰か1人のリーダーがすべて把握しようとするのは無理があります。そこで、「ペア・スケジューリング」(6月15日の記事参照)という相互管理システムを導入することになるわけですが、これによって管理できるのはあくまでペアのメンバー2人の進捗であって、チームの進捗をリーダーが管理することが必要な場合もあるでしょう。
前回は、自分の仕事の実績をもとに「予定表のスクリプト」を作成する、という方法をご紹介しました(6月15日の記事参照)。「スクリプト」とは、レストランに入り、注文し、食べてから会計を済ませるまでという、誰にでもすぐ分かる共有知のことを指します。詳細は、次のようなものです。
上記は、レストランに行った経験をもとに書き出したものです。さらに、それぞれのステップごとにだいたいの所要時間も把握できています。具体的に何分ぐらいかかるかまでは分からずとも、例えば「食事を待つ」というステップが異常に長く感じられれば「ちょっと遅いなぁ」と感じるレベルです。
同様に、仕事においても自分の作業実績をもとに、「予定のスクリプト」を作っておくことで、まず自分の仕事の指標が得られます。例えば「無理のない1日の、典型的な過ごし方」という基準になるわけです。
これをチームメンバー同士で公開しあうようにすれば、お互いの行動予定が分かるのに加え、「予定のスクリプト」における相手の工夫や発見が得られることもあるでしょう。
さらに、このような「予定のスクリプト」を用意するやり方を、「ペア・スケジューリング」に適用してみます。つまり、まずはペアで仕事の実績を作り、その実績をもとにして「ペア・スケジューリング」のスクリプトを用意するのです。
これに沿って仕事を進めていけば、1週間のうちに信頼性の高い、「ペアのための予定と実績のスクリプト」を用意できることになります。これが「ペア・スクリプト」です。
「ペア・スクリプト」は、「ペア・スケジューリング」のプロセスを通じて、2人のメンバーが互いにツッコミを入れあいながら作り上げるものです。それゆえ、客観的にも無理のない、典型的なポイントだけを押さえつつ、各メンバーの作業実績のエッセンスを凝縮したものになります。
リーダーは、このスクリプトを読むことで、チームの状況把握を短時間で効率よく行うことができるようになるでしょう。とはいえ、リーダーが自分の仕事の合間に読むことのできるスクリプトの量には限りがあります。「読むだけの仕事」は一見簡単そうに思えるために、時間も確保せず、「手が空いたら一気に」と思いがちですが、忙しい現代のビジネス・パーソンにとって手が空くことはまずないでしょう。ですから、リーダーは自身のスケジュールの中で「スクリプトを読む時間」をきちんと決めて、確実に読み込むようにします。逆にいえば、スクリプトをきちんと読んでいる限りは、チームの異変にいち早く気づくことができるからです。
なお、「ペア・スクリプト」はリーダーだけでなくチーム全体のミーティングなどで持ち寄り、相互に見せあうこともチームにとって有益となるでしょう。
1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。
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