【番外編】「高校生がもっと出てきてほしい」――「ねみんぐ!」を作った現役高校生3人組からのエールひとりで作るネットサービス(1/3 ページ)

「ねみんぐ!」というネットサービスを作ったのはなんと現役の高校生。熊本在住の草野さん、東京在住の安野さん、三重在住の倉世古さんが勉強の合間に作り上げた。“現役高校生”しながら「ねみんぐ!」を作り出した経緯についてアツく語ってくれた。

» 2008年02月21日 09時20分 公開
[田口元,ITmedia]

 「ひとりでつくるネットサービス」第22回は番外編として、現役高校生3人がつくっている「ねみんぐ!」を取り上げる。「ねみんぐ!」は画像をアップロードするとユニークな名前を付けてくれるというサービスだ。プログラミングコンテストで出会った、遠隔地に住む3人。彼らがネットサービスを作り上げるに至った経緯はどういったものだったろうか。

3本の糸を結ぶ、運命のスピーチ

 「国民全員にプログラミングの楽しさを知ってもらいたいと思っています」(倉世古さん)。「ネットでもっと人がつながっていくといい。そのために何ができるか考えたいのです」(草野さん)

 「やべー、こいつらアツいよ!」。安野貴博さん(17)は心の中で叫んだ。プログラミングコンテスト「EPOCH@まつやま」 に参加したあと、懇親会で参加メンバーが自己紹介をしていた席だった。同世代の草野翔さん(15)、倉世古恭平さん(17)のスピーチに感動した。2007年11月のことだった。

 「すぐに話をしにいきました。その後携帯で赤外線して連絡先を交換したんです」。3人はそれぞれ別の地域から参加していた。安野さんは東京、草野さんは熊本、倉世古さんは三重から。3人はすぐにメッセンジャーで会話をするようになる。「Skypeで電話するのもいいのですが、やっぱり親が横にいるのでマイクで話をするのはちょっと恥ずかしくて」。倉世古さんはそう言って笑う。

プログラミングへの目覚め――安野さんの場合

 小学校のころから機械が好きだったという安野さん。小学校3年生のときに初めて触ったVAIOに感動した。Windowsに関する本を買ってもらい、片っ端からいじっていった。そのうちWordやExcelもいじるようになった。そんな折、本屋でExcel VBA(Visual Basic for Application)に関する本を見つける。Excel VBAを使えばゲームが作れるらしいと知り、興奮した。

 「こんな文字列を入れるだけでゲームが作れるんだ! と感動しました」。自分の手で入力したコードによってプログラムが”動く”。その達成感にハマっていった。本に載っていたプログラムは片っ端から入力し、動かしてみた。「当時、内容はよく分かっていませんでした。全部丸写しでしたが、それでもすごく楽しかったのです」

 プログラミングに興味を持ち始めた安野さんは中学に入ると、Visual Basicを購入した。「Excel VBAだとプログラムを書くのにいちいちExcelを立ち上げないといけませんから」。まずは本を買ってくることから勉強を始めた。とっかかりはゲーム。本に掲載されているコードを写してはそのゲームで遊び、少しずつ分かってきたら自分の好きな要素を盛り込んでいく。そんな風に少しずつ学習していった。

 もっと勉強したい。そう思った安野さんは高校入学後、ソフトウェア開発技術者試験を受けたり、情報オリンピックに参加したりした。さらに画面のデザインを考えるときに役立つと考え、色彩検定の資格まで取得する。そんな安野さんにとって、EPOCH@まつやまに参加しよう、と思いたったのは自然な流れだった。

プログラミングへの目覚め――草野さんの場合

 

 「メモリの中で神になった気分ですよね!」。草野さんはプログラミングをする楽しさをそう語る。草野さんは熊本出身の高校一年生。中学校のときに初めて親戚の家にあったPCに触った。ほどなくして無料のインタプリタ言語の「HSP」にのめり込んでいく。HSPを使えば手軽にWindows用のゲームやツールを作ることができた。

 シューティングゲーム、ロールプレイングゲームなどを作ってみた。自分が書いたものが目の前で動いている――モノづくりをしているという実感と、出来上がったときの達成感がたまらなかった。プログラミングにはまった草野さんは、HSPからさらにC言語へと自分の領域を広げる。

 「HSPでモノをつくるのは楽しかったけど、満足できませんでした。もっといろいろなことをしてみたかったのです」。当時自分のWebサイトを立ち上げ、掲示板で全国の仲間とコミュニケーションをとっていた草野さん。その掲示板で出会い、メッセンジャー仲間になったのが倉世古さんだった。そして、HSPを卒業した草野さんにC言語を教えたのが倉世古さんだったのだ。

プログラミングへの目覚め――倉世古さんの場合

 

 「最初にいじったのはJavaScriptでした。Webサイトを作っていてなにか小技を効かせたくて」。笑いながらそう語る倉世古さん。2004年、中学2年のころだったという。JavaScriptをいじるうちに変数の概念を理解できるようになった。プログラミングって楽しいな――そう思い始めた倉世古さんも、草野さんと同じようにHSPを見つけ、ゲーム作りにはまっていった。

 HSPを使ってシューティングゲームやクイズのエンジンを作っていたという倉世古さん。「そのころは中学生だったので三角関数がどうしても分からなくて苦労しました(笑)」。分からないことはネットで調べた、という倉世古さん。HSP関連のホームページをあさっているうちに草野さんにめぐり合うことになる。

 その後ツールをDelphi、bcc(boland C++ Compiler)に変え、パスカル、C言語と次々に習得していった。高等専門学校ではロボットコンテストにのめりこんだ。アセンブラでロボットの制御命令を書き、ICに書き込んでは動作を確認する日々だった。「アセンブラはいいですよね。メモリの構造が分かるので、C言語もより深く理解することができるようになりました」

 ある日、IT系情報サイトの「スラッシュドット」で「EPOCH@まつやま」について知った。参加は1人でも2人でも可能だったが、どうみても2人チームの方が有利。誰か一緒に出てくれないかな――そう思ったときには草野さんにメッセしていた。「一緒に出てみない?」

逢った瞬間、意気投合

 草野さんと倉世古さんが実際に会ったのは2006年11月のEPOCH@まつやまが初めて。しかし、メッセでは4年ほど話をしていたのですぐに打ち解けることができた。こうして2人で臨んだプログラミングコンテスト。「大きな数字が9で割り切れるかどうか判定しなさいとか、FizzBuzz問題のような課題が出ました。それをいかに速く正確に解いていくかの勝負になります」。予選を突破したものの、本選の一次で残念ながら敗退。「でも、楽しくてゾクゾクしました」と、2人は当時を振り返る。

 そして、そのときに一人で参加していたのが安野さんだ。冒頭にあるように、懇親会のスピーチがきっかけとなり、草野さんと倉世古さんに出会うことになる。「会った瞬間から盛り上がりました。お互いに何ができるの? と聞きまくりました。アプリケーションなのか、Webサービスなのか、ハードウェアなのか、ソフトウェアなのか。誰がどんな技術に詳しいかを知りたかったのです」

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