第1回 “分かりやすく説明”しては、いけないんですか?新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(2/5 ページ)

» 2008年02月26日 14時35分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 これは大事な話なので詳しく書きます。下の図1を見てみましょう。「先生」が「学習者」に「専門知識」を教えて、「学習者」がそれを理解するまでの過程を単純化したモデルです。

 教える側の人間である「先生」は、現実世界の「問題」について、学習者よりもはるかに豊富な知識と経験を持っています。しかしそれが先生の「アタマの中」にあるままでは教えられません。「教える」ためにはそれを整理して「教材」にする必要があります。

 その「教材」を使って先生が「教える」と、生徒は「必死に考え」て、そして「理解」します。これが大事なポイントです。

「必死に考える」プロセスなしに、人が専門知識を「理解」することはあり得ません。


 問題はここなんですね。

 実は、「分かりやすく説明」しようとするあまりに、「必死に考えなくても分かる」程度に「教材を削減」しすぎている例が非常に多いのです。これでは薄い理解しか得られませんし、そんな理解では現実の問題解決には役に立ちません(図2)。

 私がこの「教材を削減しすぎた」例を最初に見たのは20年前でした。当時、ITベンダーに入社した直後に「C言語プログラミング」研修があったのですが、その研修では「C言語の研修」であるにもかかわらず「CPUの仕組み」についてまったく教えていませんでした。「C言語」というプログラム言語はコンピュータの中枢部品である「CPU」の仕組みをそっくりそのまま反映するような形でできているため、その知識を持っておくと理解が非常に楽になります。にもかかわらず、その研修では教えていなかったわけです。

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