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» 2008年03月18日 10時08分 公開

第5回 「誰が悪いとは言わんが」――いや、言ってます!つい口に出る「微妙」な日本語

大勢に向かって、「誰が悪いとは言わないが」と前置きして説教をぶつ。特定の人を責めているわけじゃないと強調すればするほどかえって、誰かのことが念頭にあるのだと強調しているようなもので、あまり、いいしかり方とは言えません。

[濱田秀彦,ITmedia]

 「誰が悪いとは言わんが、最近ちょっと経費の使い過ぎが目に余る。新しいプロジェクトが始まって、外部の人とのやり取りが増えた者がいるのは分かるが、通信費やらタクシー代やら、ここ二カ月で、昨年の半期分の出費だ。また、クラブ○○だの××サロンだの、部長の私も使ったことのない額の領収書が回ってくる。しかもなぜか場所は決まって新宿界隈で、店の名前が違うのに領収書の筆跡が同じというのも不自然だ。しかも特徴あるクセ字で。誰が悪いというわけではないが、各自、自重するように」



   出現度……★★★★
   不快度……★★★★★

 「お前だよ、お前」と、部長の目は明らかに相手を特定しているんですが……。

 あなたの職場には、特定の社員の顔をちらちらと見ながら全体に向かって小言を言うような上司っていませんか?

 一罰百戒のつもりか、あるいは個人名を出さないことが思いやりと勘違いしているのかもしれませんが、ターゲットを特定しながら集団に向けて発言するのは、2つの点で問題です。

 1つ目の問題は、これでは問題を起こした当人への指導にならないということです。特定の人物に不満があり、改善してほしいのならば、当人を呼んで、面と向かって何がどう悪く、どうすればいいのか個別指導しなければ改善は望めません。集団に向かって言っているだけでは不十分です。それどころか、ことによると当人は自分がしかられていること自体を自覚できないことだってあるでしょう。

 2つ目の問題は、当人以外の部員にとって、不愉快であるということです。部員たちは「自分たちは関係ないだろう。巻き込まないでほしい」と不満に思うでしょう。

 あるいは、本当は何のやましいこともないのに「自分のことを言っているのかも」と疑心暗鬼になる人もいるでしょう。

 結果的に、当事者には自覚されずほかの人を不愉快にさせるだけで、問題は解決しません。指導は、面と向かってしてほしいものです。

 もっとも、面と向かって指導したところで、やはり問題解決に結びつかないケースもあるようですが。

 「飯田橋君、今回のヒューマン製薬さんの商談は残念だったな。契約が取れなかったのは仕方ないが、もう少し事前に準備できることがあったんじゃないかとは思うな。ま、必ずしも君が悪いと言うわけじゃないんだけど」

 「すみません」

 「いや、君が悪いって言ってるんじゃないよ」


 明らかに悪いと言っています。

 こういう、真綿で首を絞めるようなしかり方はいけません。

 上司を対象にした研修で「しかるのが苦手」という人に挙手を求めると、業種業態に関わらず、毎回ほぼ6割くらいの人の手が挙がります。それほどしかり方は難しいものです。部下をしかれないという人の多くは、人柄のいい協調性に富んだ人ですが、適切なタイミングで指導が行われないことは部下にとっても不幸です。

 もちろん、怒りに任せて相手の人格を否定するようなしかり方はいけません。「人をしかる」という気持ちでなくてかまわないのです。Iメッセージについてはすでに紹介しましたが、「私は、○○○○については改善の余地があると思う」と、一人称で自分の気持ちを言えれば、相手は素直に受け取ってくれるでしょう。

肝に銘じよ!

「誰が」とは 言わないならば 黙ってて


筆者:濱田秀彦(はまだ ひでひこ)

ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1999年に独立。現在はコミュニケーション研修講師として、プレゼンテーション、話し方、マネジメントなどの分野で年間100回以上の講演を行っている。また、Webサイトのプロデュース、システム開発も手がける。著書には『ビジネス快話力』(主婦と生活社)、『みんなのパワーポイント企画・構成・話し方』(エクスナレッジ)などがある。


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