第4回 「どっちでもいいけど」――よくないくせに!つい口に出る「微妙」な日本語

言いたいことを言っておいて価値判断を留保するポーズを取る「どっちでもいいけど」。本当にどっちでもいいとは思ってないのは明らかで、ただ後味の悪い言い回しです。

» 2008年03月13日 10時01分 公開
[濱田秀彦,ITmedia]

 「津田沼さん、今年新卒で入った営業事務の市川さんのことなんだけどさ。そう、なんか、あまりよくない噂があっちこっちから聞こえてくるんだけど」

 「ええ、そうですねぇ。営業マンとベタベタし過ぎるとかお客さまに色目を使うとか。女性社員の評判は最悪ですね。あんなのと一緒に仕事したくないって。『○○さーん』と語尾を延ばした甘ったるいしゃべり方が媚を売っているみたいでイヤなんでしょうね。爪の色が派手だとか口元がいやらしいとか、私生活は二股三股とか、給湯室で彼女をよく言う人はいないですね。すぐクビにしてほしいってみんな言ってますよ。まあ、私はどっちでもいいんですけど」



   出現度……★★★
   不快度……★★★★

 悪い噂の発信源はたぶん、この津田沼さんでしょう。

 散々こき下ろしたあとで「どっちでもいい」もないものですが、男女に関係なく、こういう人はいますね。

 このタイプの人は自分の意見を通したい一方で、悪者にされたくないという気持ちもあるので、「私はどっちでも」と、無関心あるいは傍観者のポーズを取るわけです。

 でも、それを額面通りに「あ、どっちでもいいんだ」と受け取る人はいませんし、言った側にしても本当に「どっちでもいい」と受け取られてしまったら困るわけですよね。

 自分の意見を表明するのは大いに結構ですが、捨てぜりふにしてしまっては、まともに聞いてもらえなくなるだけです。

 一対一のコミュニケーションにおける「最後は君が決めることだけど」も同類です。

 「結局、会社にしがみついたところで、ここで君にできることなんてもう何もないんだし、故郷に帰ってゼロから出直したほうが、親孝行もできて、よほど幸せな選択だと思うんだけどなあ。ま、最後は君が決めることだけどさ」


 とうとうと自説を展開しておきながら、最後は中立的立場に逃げてしまう。大変に陰湿な言い回しです。自分の意見なら堂々と言うか、言うべきでないと思うなら意見表明を控えればいいのです。こういう上司がいると、職場の雰囲気は暗くなり、モラールはどんどん下がっていきます。そういう部署にいる社員は気の毒でなりません。

肝に銘じよ!

「どっちでも」よければそうは 言いません


筆者:濱田秀彦(はまだ ひでひこ)

ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1999年に独立。現在はコミュニケーション研修講師として、プレゼンテーション、話し方、マネジメントなどの分野で年間100回以上の講演を行っている。また、Webサイトのプロデュース、システム開発も手がける。著書には『ビジネス快話力』(主婦と生活社)、『みんなのパワーポイント企画・構成・話し方』(エクスナレッジ)などがある。


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