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» 2008年03月27日 09時45分 UPDATE

つい口に出る「微妙」な日本語:第8回 「オレの若い頃は」――過去はどうでもいいの!

自分のノスタルジーに相手を引き込むきっかけとなる決まり文句。これが出てくると、聞かされるほうは心底うんざりさせられます。ご立派な過去のことはもういいから、現在の話をしましょうよ。

[濱田秀彦,ITmedia]

 「本八幡君、最近は新規開拓が減ってるじゃないか。既存客ばかり行っていてはダメだぞ。オレの若い頃は、ビルの上から下まで新規訪問したもんだ」

 「はあ……」

 「そうやってガンガン仕事を取ってくるから、『飛び込みのテツ』なんて呼ばれていてな。1日100件は飛び込みしたもんだ。断られても食い下がって、コワモテの客を相手にしても一歩も引かなかったね。会社に帰ると女子社員の熱い視線が……おいっ、どこに行くんだ。まだ話は終わってないぞ」


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   出現度……★★★
   不快度……★★★★★

 「オレの若い頃」イコール自慢話です。

 こういうのにつき合っていたらキリがありません。

 世の中に、他人の自慢話を聞くことほど退屈なことはありません。例文では最後に部下がどこかへ行ってしまいましたが、実際には上司が気持ちよく話し続けている途中で逃げ出すのは難しいでしょう。イヤイヤ聞かされた話が心に響くはずもありません。こうして、人心が離れていくことになります。

 私の実施するプレゼンテーション研修では、発表実習のテーマとして「成功体験」と「失敗談」を話してもらっています。実習の際、自分のスピーチタイム以外は、ほかの人の発表を聞くことになりますが、聞き手を見ると、「成功体験」を聞いているときは集中が途切れがちになります。一方、「失敗談」を聞いているときは、発表が続いても集中して聞いていますし、うなずいたり笑ったり反応を返しています。

 必ずしも成功体験は自慢話とイコールではありませんが、下から見上げるように聞かなければならないという状況は同じで、聞いていてだんだんつらくなってきます。

 一方の失敗談は、上から見下ろすように聞いていられます。楽ですし、心地よいのです。休憩時間になると、失敗談のスピーチが終わった人に話しかける人もよく見かけます。成功体験を話す際でも、そこに至るまでの失敗も少し加えると聞く側の共感は高まります。

 本題に戻ります。「オレの若い頃は」の一番の問題は、迷惑な自慢話になってしまうことですが、

 「オレの若い頃は大変だったんだ。携帯もメールもなかったから」

 などと、聞き手にとって共有できない過去が舞台になっていることも無視できない問題です。

 「昔は」という言い回しも同じ理由でいただけません。

 「昔はよかったよ。2000円以下のタクシー代なんて領収書不要だったんだぜ」

 自分が経験していない過去の話を持ち出され、妙な優越感とともに話されるのは大変つらいです。過去のことを話していて気持ちがいいのはわかりますが、やるなら、わかり合える人同士でやってほしいということです。

肝に銘じよ!

若い人 共感できない 「若い頃」


筆者:濱田秀彦(はまだ ひでひこ)

ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1999年に独立。現在はコミュニケーション研修講師として、プレゼンテーション、話し方、マネジメントなどの分野で年間100回以上の講演を行っている。また、Webサイトのプロデュース、システム開発も手がける。著書には『ビジネス快話力』(主婦と生活社)、『みんなのパワーポイント企画・構成・話し方』(エクスナレッジ)などがある。


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