第2回 プレイヤーとマネージャーの違い今さら聞けないマネジメント&コーチングの基本(4/5 ページ)

» 2008年03月19日 14時00分 公開

明らかに違う場合は「私メッセージ」で考えを伝える

 ただ、明らかに部下の選択が間違っていると分かる場合もあります。上司に「この人のいう方法もアリだな。試してみてもいいな」という気持ちが少しでもあればやらせるべきですが、自分の経験、実績、知識、スキルから考えて、明らかに部下の言っていることは違っているという場合は、決してソフトな説得スキルを使わずに、「私メッセージ」でシンプルに考えを伝えたほうがいいのです。

 最初に部下の意見、選んだ理由を聞いたら、「なるほど」と、いったんYesで受けます。その後、「だけど(but)」では返さずに、「Yes, and」で受けて、私メッセージで伝えます。「なるほど、キミはそう思うんだね。そして、僕はこっちがいいと思う。その理由は○○だから」と、はっきり伝えるほうが、回りくどく質問をされるより部下にとってはいいのです。

ITmedia 選択肢が複数ある場合はいいと思うんですが、部下が1つしか持ってこなかった場合は、上司から別の選択肢を出したほうがいいんでしょうか。例えば、部下が「これがやりたいんです!(以上で終わり)」という場合、「こういうのもあるんじゃない?」と、上司は別の選択肢を出したほうがいいでしょうか。

平本 まず、必ず、どうしてやりたいのか、その理由を聞いてあげてください。「何がやりたいのか、なぜやりたいのか、やったらどうなるのか」の3つは聞いてください。意外とこういうことを考えずに、ただ「やりたい!」と言っているだけのときもありますから。それを聞いて答えるだけで整理されてくる場合もあります。

 部下が持ってきた案が、明らかにうまくいかないと上司が分かっている、あるいはほかにいい方法があるとしたら、「なるほどキミはそう思うんだね(Yes)」と受けて、「そして(and)、僕はこういう案もあると思うんだけど、どう思う?」と聞けばいいですね。部下が「そっちが良さそうですね」と言うようであれば、そう思った理由を聞いて、「なるほど、キミから見てもそう思うんだ。じゃあ、やってみよう」と進めればいい。「Yes+and+私メッセージ」の公式です。

 それを、過去の失敗やデメリットを質問して遠回しに説得しようとすると、部下は嫌な気持ちになります。「結局、この上司は僕がやりたいといっても、何だかんだ言ってやらせてくれない。やる気を出せと言うけど、好きなこともやらせてくれないのに、出るはずないよ」と思うわけですね。

 部下の持ってきた案に対して、「面白い。でも、オレも経験がないし、ちょっと分からない。ほかの選択肢も浮かばない」ということであれば、ニュートラルな気持ちでコーチングです。「なるほど。なぜやりたいの? やったらどうなるの? いつぐらいまでに、どんなふうになっていればいい? それに向けて、今週1週間は何をやろうか?」というような感じで聞いていきます。

 可能ならスケーリングするといいですね。「完成形を10として、今は何点くらい? 来週までに何ができる? それができたら何点くらい上がる? じゃあ、それでやってみよう」と。次の週に確認して、思ったよりいい調子で、先週の3点がいきなり5点になったと部下が言えば、そのまま続ければいいし、思ったようにいかず点数も全く上がっていないなら、改善を加えるか、それともまた新しい方法を考えるかを検討します。上司にアイデアがあったら、それを提案してもいいですね。要はバランスです。とにかく、部下指導に説得スキルを使うことは一切止めてください。これはお客さんや外部の人に対して用いる方法です。身内に対しては、引き出すスキル、または私メッセージです。


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