語学オタの語学習得術は“周囲巻き込みバトル式”樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

わが家の食卓では毎日、ヨメサンから外国語が飛んでくる。ある時は英語、またある時は中国語、またまたある時はフランス語とひっきりなしだ。このままでは筆者ものまれてしまう――そう考えて、こちらも語学を学ぶことにした。

» 2008年03月26日 08時30分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 わが家の夕食を語らせてほしい。息子たち3人が自立したので、通常は筆者とヨメサンの2人で食事をしているが、筆者は終日、打ち合わせやアイデア出しに明け暮れてクタクタ。それでもにこやかに話をしながら、海老の天ぷらをつまみ上げた途端、ヨメサンの携帯が着メロを鳴らし始める。その音がでかい。

ある時は英語、またある時は中国語、またまたある時はフランス語……

 「な、なんだ」。最初のころは音の大きさに仰天していた。実はこれ、NHKラジオやテレビの外国語会話の始まる時間を知らせる携帯のアラームだったのだ。「英語会話が始まる」とか、「今から中国語放送なの」と、ヨメサンはルンルンとラジオのスイッチを入れる。途端に食卓に中国語があふれる。ヨメサンは天ぷらをほお張りながら、上海の市場にいるおばさんのように振舞って、筆者に中国語をぶつけてくるのだ。

 別の日はフランス語だったりする。早朝や深夜のこともある。英語のビジネス会話が流れることもある。さらに奇怪なことには、ヨメサンは2007年からはヒンディ語も始めた。1日に複数の言語が、いくつかの着メロに合わせてリビングを覆い尽くすのだ。さらにほかのハングルやアラビア語も虎視眈々と狙っている。

 共通するのは、大きな声で学習中の言語を筆者にぶつけてくること。“無実”の筆者を巻き込んで語学の練習をするのがヨメサンの流儀なのだ。最近は、ヨメサンの携帯が着メロを鳴らし始めたら、筆者は食事中であっても両手を上げて降参の踊りをすることにした。

 筆者も海外生活歴は20年におよぶ。語学にはそれなりに関心を持っていると思う。ナイジェリアのラゴスに駐在していた時には、筆者はヨルバ族の名誉酋長になったが、その時はカタコトのヨルバ語の挨拶はできた。その後のサウジアラビアでは、2年間アラビア語を学んでいたので、日常生活レベルのアラビア語を使えた。ベトナムに駐在した時は、2年間ほぼ毎日ベトナム語の勉強をしたので、式典では短いながら演説したことすらあったものだ。

 そもそも、夫婦そろってなぜこれほどに“語学オタク”なのか――。筆者もそうだが、ヨメサンも大阪外語大卒。語学には一家言あるのである……あるはずなのだが、筆者の場合、日本に帰国すると、たちまちアラビア語もベトナム語も脳からきれいさっぱり消えてしまった。最後に駐在したネパールでもやはり同じだった。一方、ヨメサンは大学で学んだフランス語までいまだにある程度覚えている。ヨメサンの脳には、減衰とか忘却というのが欠如しているようだ。一端覚えたら忘れない。大学時代の借金まで、うるさく督促する(とうとう金利と合わせて返済させられた、トホホ)。語学オタクならぬ、“語学ケチ”なのだ。

NHKラジオを選ぶ理由

 このままいくとわが家のリビングは国際会議場のようになってしまう。ここで筆者は4月を迎えて「毒を持って毒を制す」と、新たな語学の勉強を開始することを決意。NHKラジオを使った語学学習に“参戦”することにした。

 英会話のポッドキャスティングも多い現在、なぜNHKラジオなのかという疑問もあると思う。まず、語学のバリエーションが豊富なこと。英語だけでなくフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、ハングル、アラビア語などを選べる。さらに、一般的な会話レベルからビジネスまで難易度も選べるのがうれしい。こうしたバリエーションがまとまっていることも重要なのだ。もちろん、ヨメサンとの“勝負”なので、NHKラジオ以外には選択肢がないわけだが。

 ラジオの編成期を考えると、語学放送も3月31日から新しい番組になる。心機一転、新しく語学の勉強を開始する最良(唯一?)のタイミングと言えよう。問題は「さて、何語を選ぼうか」。ビジネス英会話は当然だが、それだけだとヨメサンの圧倒的な迫力に負けてしまう。過去に学んだアラビア語やスペイン語か、それとも最近ほぼ読み切った塩野七生の「ローマ人の物語」の影響から、イタリア語を開始しようかと悩んでいる。

 とはいえ、そうそう悩んでもいられない。筆者は、ほぼ毎日企業の研修や大学に教えに通っているから、自宅で過ごす時間が極めて不規則。一定時間、ラジオに向かっているわけにもいかない。早朝も無理だし、夜中まで仕事をしている。初めから不利な戦いだ。“留守録”して、それを新幹線や機内で聞かなければ勉強できないだろう。そこで勝てる方法を考えた。新しいツールはないものだろうか。

秘密兵器は……

オリンパスのラジオサーバ「VJ-10」

 そしてついに最強のNHKラジオの語学教育向けガジェットを発見した。オリンパスのラジオサーバ「VJ-10」である。これは37GバイトのHDDを内蔵したラジオで、ビットレート32kbpsの長時間モードを利用することで最長2500時間の録音が可能だ。

 まさにNHKラジオの語学学習のために作られたようなラジオで、これを自宅に設置しておけば、筆者が愛用しているWindows PCやICレコーダ「DS-40」(同じくオリンパス)に簡単に転送できる。2万ファイルまで録音できて、再生も早くしたり遅くしたり、繰り返し聞いたりも簡単。語学学習には夢のようなマシンである。これでヨメサンに対抗することにした。

 これでイタリア語を学べば、大好きなイタリア料理をイタリア語で注文できるはず。これまではイタリア語ができなかったがために、ヨメサンに注文してもらってばっかりだった。食事の主導権はヨメサンにあったのだ。イタリア語をマスターして、ヨメサンにメニューの中身を説明できるようになれば、イニシアティブも握れるはずと目論んだ。

 「まだ学習を始めていない今、なぜ筆者がこのようなコラムを書いているのか」だって!? それはこの連載を通じて、読者諸君に開始宣言をすることで、自分自身を背水の陣に置き、三日坊主を避けるためである。それと、NHKの語学放送の開始の仲間をたくさん作りたいからである。

 さて、ヨメサンにばれないように、こっそりとこのラジオサーバを手に入れて、留守録のセットをしようとしたが、敵もさるものである。知られてしまった。やばい。「そのラジオいいわね。私がインドや中国に旅行している間も、きちんと録音しておいてね」「……」


 実はこのNHKラジオでの“語学マラソン”、ヨメサンと筆者で盛り上がっていたら、わがアイデアマラソン研究所のスタッフや、息子たちの奥さん2人も参加することになった。こうして、誰かと競合しながら、お互いを励まし合い(?)ながら、意地を張りながら、進める語学学習もあるのでは。半年後に、パワーバランスのとれたわが家の語学学習の結果を報告したいと思っている。

今回の教訓

教科書は書店に急げ。4月号は売り切れる。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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