「考える仕事」の見通しが立てられなくて困る【解決編】シゴトハック研究所

“考える仕事”は、時間をかけたからといって先に進むとは限らないもの。エンドレスになりがちな考える仕事を、計画的に進めるための方法を2つ紹介します。

» 2008年04月01日 01時24分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 今回の課題:「考える仕事」の見通しを立てるには?

 コツ:「一人会議」を行う


 仕事には大きく分けて「考える仕事」と「手を動かす仕事」の2つがあります。「手を動かす仕事」が、やればやっただけの成果が目に見えて積み上がっていく仕事なのに対して、「考える仕事」は、時間をかけたからといってその分だけ前に進むとは限らない仕事です。

 「手を動かす仕事」については、習熟すればするほど精度の高い見通しが立てられるようになります。一方、「考える仕事」は、習熟しても、いったいどれぐらいの時間を取ればいいのかがさっぱり見当がつかないということがままあります(そもそも「考える仕事」における習熟とは何を指すのかの基準もあいまいです)。

 そうなると、とりあえず時間を確保しても、その時間内に終わるかどうかが分からないので、常に不安と背中合わせということになります。問題編にもあったように、結局、最後は「やっつけ仕事」になりがちなのです。

 今回は、この「考える仕事」を見通しをもって計画的に進める方法について考えていきます。具体的には、紙のノートを使った2種類のワークをご紹介します。

今の先にある実現を書く

 1つ目のワークは、今目の前にある仕事について、その先にある「実現したいこと」をノートに書いていくというものです。具体的には、その仕事をすることによって、何が実現するかを考える作業です。「考える」だけでは何も残らないので、その証拠としてノートに書くわけです。

 例えば、「新入社員の導入研修の設計と運営」という仕事があるなら、次のような項目が書き出されるでしょう。

  • チームで一緒に仕事をしていく上での共通の認識が得られる
  • 教える立場に立つことによって、自分でも勉強になる

 ほかにもあると思いますが、いったんここでとどめた上で、この2項目を眺めてみます。すると、もう少し具体的な「実現」に分解できるのではないか、ということに気付くはずです。気付いたら、それを書いていきます。

チームで一緒に仕事をしていく上での共通の認識が得られる

  • コミュニケーションのミスが少なくなる
  • ミーティングを迅速に進められるようになる
  • グループウェアの効用を最大限に引き出せるようになる
  • メンバー全員が自分の仕事に集中できるようになる

教える立場に立つことによって、自分でも勉強になる

  • 自分では分かっていたつもりのことが、実はあやふやにしか理解できていなかったことに気づる
  • 自分であやふやにしか理解できていなかったことをまとめることで、チーム全体にも貢献できる(あやふやなのは自分だけではない)
  • マネジメントのトレーニングになる

 このように、「その先に得られること」を想像しながら書いていくことによって、目の前の仕事の意味づけが明確になります。おのずと、実現するための方法に意識が向くようになります。

今を改善する方法を書く

 意味づけが明確になれば、「では、そうなるためにはどうすればいいか?」という疑問が浮かぶでしょう。あとは、これに答えていくようにすればいいのです。

 例えば、「ミーティングを迅速に進められるようになる」であれば、次のように質問文に変換した上で、その答えを書いていきます。

ミーティングを迅速に進められるようにするにはどうすればいいか?

  • アジェンダは前日までに決めて参加者に配布しておく
  • アジェンダごとに所要時間を決める
  • タイムキーパーを決め、タイマーを使って所要時間を守らせる

 このように、質問文を前にすれば自然と「こうすればいい!」あるいは「こうすればいいのではないか?」という「答え」あるいは「仮説」が出てくるはずです。経験がなくても、「とりあえず、この方法を試してみよう」という行動を起こすための呼び水にはなるはずです。

 筆者は、毎朝の仕事を始める前の5分間を使ってこの2つのワークを実践しています。名づけて「一人会議」。ルールは次の2つです。

  1. タイマーをセットして正確に計る
  2. 5分たったら途中であっても中断してよい(続けたい場合はキリのよいところまで)

 朝に行うことで、そこで得られた「方法」をすぐに試すことができるというメリットが得られます。抱えている仕事をどのように進めていくかのガイド役になってくれるわけです。

 「5分ぐらいでは、たいしたことはできないのでは?」と思われるかも知れませんが、今回のように明確な質問文を前にすれば、意外と出てくるものです。そして、毎日続けるうちに、徐々に「思いつくコツ」のようなものが自然と身についてきますから、もっとたくさんのアイデアが出るようになるでしょう。

 最終的には、仕事を始める前には必ずこの5分間というウォーミングアップをするものなのだ、という習慣として根づくようになります。一般的に、何かを習慣にするのは容易ではありませんが、「たった5分でガイドが得られる」というメリットを実感できれば、自然と続けたくなるはずです。

 今回ご紹介したワークの特徴は、「考える仕事」を「5分」というパッケージに押し込むことによって、疑似的に「手を動かす仕事」に変えていることです。「5分」であれば、スケジュールに組み込むのは難しくないでしょう。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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