問題解決のための手の動かし方──『問題解決のレシピ』5分で読むビジネス書

「MECE」や「イシューツリー」という言葉に聞き覚えはあるだろうか。問題解決の手法を、豊富な実例とともに紹介した一冊。

» 2008年04月15日 13時50分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

河瀬 誠 『問題解決のレシピ』(日本能率協会マネジメントセンター刊)

 イシューツリー作りでつねに心がけてほしいことに、「シンプルさ」がある。複雑なツリーは、往々にして出来が悪い。多くの論点が網羅されているように見えて、課題の本質をついておらず、議論を混乱させるだけだ。

 逆に、課題の本質をついたイシューツリーは、必ずシンプルなのである。(p.68)


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 仕事というものは、大きく次の2つのステップに分けられるだろう。

  1. 問題を見つけるステップ
  2. 問題を解決するステップ

 問題というものは最初からそこにあるわけではない。自ら主体的に見つけ出すための行動を起こすことで、初めて目の前に現れる問題もある。例えば、次のような問題だ。

 世評の影響もあり、「より安く」「より公平に」という競争入札制度がより徹底され、現時点では問題は表面化していないが、近い将来利益を食いつぶす可能性がある。そうならない企業体力を今のうちにつけておくため、「もっとコストを抑えて制作できるようになっておく」という方針が定まった。


 これは、本書の最終章である第5章で取り上げられている事例である。「近い将来利益を食いつぶす可能性がある」という懸念から「来期の原価率10%減」という目標が引き出され、これを実現するにはどうすればいいかという問題が設定されている。続いて、この問題の解決手順が具体的に紹介されている。

 その手順の流れは次の通りだ。

  1. 課題の設定
  2. 仮説の設定
  3. 仮説の検証
  4. 解決策の実行

 以上の手順を踏んだにもかかわらず問題が解決しないという場合は、上記いずれかのステップに誤りがある、ということになる。

 本書ではステップごとの注意点と必要とされるスキルが具体例をまじえて解説されており、随所に理解度を試すためのワークも用意されている。著者も、「問題解決スキルが「使える」ようになるためには、実際に頭で考え、手を動かさなければなりません」と述べている通り、ただ読んで「なるほど」と理解するだけでは十分ではないだろう。

 問題解決のために身につけるべきスキルは次の2つだ。

  1. 論点を整理するスキル
  2. 仮説を発想しまとめるスキル

 この2つのスキルを学ぶのが本書の前半のヤマ場となる。後半は身につけたスキルを実地に応用していくための、より踏み込んだ解説が続く。

BOOK DATA
タイトル: 問題解決のレシピ
著者: 河瀬 誠 著
出版元: 日本能率協会マネジメントセンター刊
価格: 1300円
読書環境: ×書斎でじっくり
◎カフェでまったり
△通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 抱えている問題について、どのように取り組んだらいいか悩んでいる人。

 もし、「MECE」や「イシューツリー」という言葉に聞き覚えがあるなら、最初に5章の事例の部分から読み始めるといいだろう。読んでいて理解しにくいところがあれば、目次を見て該当する解説部分を読むことで、より問題意識を持って向かうことができるはずだ。

 特に、論点を整理する上で必須となる「イシューツリー」という手法については、豊富な具体例とともに詳しく解説されているため、すぐにでも業務に採り入れることができるだろう。重要なことはまず手を動かして試してみることだ。もし思い通りの結果が出ずに一からやり直すことになったとしても、そのたびに「あらたな視点」が得られ、頭の中も整理されるという。手を動かした分だけ前進できるわけだ。

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