会議の前に創造的ムードを醸すゲーム――あいうえおプラスアイデア創発の素振り

最近どうも会議が重苦しいし、とげとげしい。たまには会議の前に手軽な運動でもしてリラックスしたムードで会議をしたい。体を動かす運動は大変でも、ちょっとやってみたい知的玩具がある。「あ」「い」「う」「え」「お」……という文字を並べて言葉を作る勝負で、意外なヒネリを生むのだ。

» 2008年05月13日 18時00分 公開
[石井力重,ITmedia]

 以前、「花見で株ゲーム」の回で紹介したゲームに続き、創造性を高める玩具(クリエイティブ・トイ)を紹介する。会議の前に数分間で遊べて、創造的ムードを醸すのに役立つツールだ。

 筆者のプロジェクトチームでは、創造性の観点からさまざまな市販の玩具やゲームをテストプレイする。その中でも、「道具はシンプルなほど魅力的になる」の好例のような玩具。それが学研の「あいうえおプラス」である。

 これは、筆者の会社のコンサルティング・スタッフたちも高く評価していて「もっと売れてもいいのに……」という声が聞こえるほど。本当に良い道具というのは、得てしてそういうものかもしれない。

 パッケージを開けると2センチ角のプラスチックのチップ。表面にはひらがな1文字が印刷されている。ひらがな全46文字分のチップと予備チップが4枚で合計50枚。あとはチップを6枚並べて立てるための台が4つ。パッケージにはこれだけが入っている。いくつかの遊び方があるが、いずれもシンプルなルールである。

信じがたいことに、「しりとり」が白熱する!

 手っとり早くできるのが「しりとり」。場に広げたひらがなのチップを使って、単語を作る。次の人が、そのおしりの文字につながる単語を作る。チップは場から自由に拾えるが、すでに使った単語はダメ。

 開始直後は、ほとんど瞬時に単語を思いつくのでサクサクと進む。しかし、チップの残りが半分になるころから、たかが単語を作ることが高度な課題になりはじめる。作ろうとする言葉に必要なチップがないからだ。

 「ぬ」だの「る」だの言葉は場に残っているが、「あ」とか「こ」とかよく使う文字はとっくになくなっている。使いにくい文字だけを組み合わせて言葉を生成できるかどうか、語彙(ごい)力・発想力の問われるところ。苦し紛れに「るい(塁)」だの「ぬえ(鵺)」だの、普段使いもしない言葉が出てくる。

 「“ぬえ!”なんて伝説上の生き物とか出してきちゃ、ダメだろ」「いや、鳥の名前ですよ」「え? どんな鳥」「ぬえー、って鳴くんじゃないですかね」なんて、“ゆるめの会話”が自然と出てくる。

 普通、ゲームは勝ち負けが焦点になるが、このあいうえおプラスの場合、最後は勝ち負けがどうでもよくなって、何とか残りのチップを使い切ることに皆の興味が移り、いつの間にかみんなで課題をクリアしようとする構図になることが多い。ちなみに、マージャンのように手牌だけで役を作って上がる、という遊び方もある。重苦しい会議のムードを変えたい時には10分間だけ、このくらいのライトな遊びを試してみるのもいいかもしれない。


 余談になるが、あいうえおプラスは商品企画の意味でも興味深い。商品アイテムは、「あ」〜「ん」という何気なく毎日使っているコンテンツだけ。そこに、優れた使い方(遊び方)を付与すれば、優れた商品になる――という好例だ。もしかしたら、あなたの会社の社内規則集や社内報を、ばらばらにしてチップ状にしてみたら、意外と白熱するゲームができるかもしれない。

製品名 価格 発売元 筆者が購入した場所
エンブレインIQプラスあいうえおプラス 1500円 学研 イオン富谷SC

著者紹介 石井力重(いしい・りきえ)

著者近影

 事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」


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