解説編 吉田和人の営業ツール「紙芝居」の秘密とは奇跡の無名人たち(2/3 ページ)

» 2008年10月15日 11時30分 公開
[森川滋之,ITmedia]

吉田和人(=吉見範一氏)の営業論

 吉田和人の営業に対する根本的な考え方がまず出てきます。

第1回 引き受けるんじゃなかったよ

 和人は営業の天才だと誰もが思うだろう。正しくは彼は営業の方法論を作る天才である。営業は根性や経験ではない、というのが和人の持論だ。

 モデルの吉見氏は、今新しいコンサルタント名を募集中だそうですが、現在は「紙芝居営業コンサルタント」を自称しています。自身の開発した営業ツールの「体系」を「紙芝居」と呼んでいるんです。「紙芝居」の実例は、「第2回 最初の決断」でそれを作っているところが、また「第3回 同行」でそれを使っているところが出てきます。

 吉見氏の営業ツールのうち、このシリーズでご紹介したのは、アプローチツールと呼ばれる、初回訪問の門前払いを回避するためのツールです。

 吉見氏は、自分の営業ツールをなぜ「紙芝居」と呼ぶのか? それは、ほとんど絵やグラフで構成しているからです。文言を全部書いてしまうと、お客様は話も聞かずに読んでしまって分かった気になり、すぐに要らないと判断してしまいます。

 だからと言って、資料を渡さずに(あるいはお客様が目を通している間に)、営業トークをまくし立てても、うるさいやつだなあとしか思ってもらえません。お客様が興味を持ってもらって、質問してもらえるような雰囲気作りが大切です。なので、絵やグラフなのです。

 ちなみにこのアプローチツールは吉見氏の「紙芝居」のごく一部。もっと知りたいと思われる方は、吉見氏の著書『「売れる営業」のカバンの中身が見たい!』(大和出版)をお読みください。

 なお、引用個所の直後に「キャンペーンに花を添えるためだけに雇った」女性が、「営業所で2位の成績を上げた」とあります。実際は、派遣会社から寄せ集めた女性営業がたくさんいたのですが、誰も売り方を教えてあげなかったので全然売れず、みんなクビになりそうだったのです。それを吉見氏が営業ツールを渡して、同行して使い方を見せてあげたところ、みんなが売れるようになったというのが事実です。

 営業が根性や経験だったのは、高度成長期の頃の話、つまり作れば売れる時代のことだと吉見氏は言います。その頃の成功体験を覚えている人が、今や部長や役員。逆に現在の30代ぐらいの人たちは、やれ根性がない、もっと足で稼げと、一番売れない方法を押し付けられていじめられているというのが、吉見氏の現状分析です。

 「まず30代を救わないと日本がダメになる。ぼくが救いたい」。吉見氏がセミナー後の懇親会でいつも語る持論なのです――。

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