スティーブ・ジョブズに見る、部下育成に必要な「人間力」部下をやる気にさせて育てる指導術(2/3 ページ)

» 2008年10月20日 15時00分 公開
[水野浩志,ITmedia]

「あきらめずに本気でいられる人」になる考え方

 とはいえ、自分が求める想いに対して、あきらめずに本気であり続けるということは、そうそう簡単なことではありません。多くの人は、何回か障害が立ちふさがった段階で、簡単にあきらめてしまうようです。そんな人たちを観察してみると、大きく2つの勘違いをしているように私には見えます。

 

 1つは、「あきらめないところを勘違いしている」ということ。本来ならば、実現したい「想い」というゴールをあきらめないことに本気になってほしいのです。しかし、その想いではなく「そこに至るやり方や方法論」に強くこだわってしまい、そのやり方や方法がうまく行かない、またはそのやり方を部下に押しつけるのだけれど、部下に上手く伝わらない、といってあきらめてしまう。そういう人が、かなり多いように私は感じるのです。

 以前、とある企業研修で管理職の方の1人が「最近の若いやつは何をいっても理解できないやつばかりだ」と憤慨してました。詳しく話を聞いてみると「書類ひとつ満足に作れない、いちいち手取り足取り細かい作業まで指示しても、納得のいく仕上がりのものを持ってこない」といい、「彼らを指導するのは時間の無駄だから、結局自分でやっちゃってますよ」と言います。

 しかし私が、「部下たちに対して、その仕事は何のためにやるのか、ということをきちんと話していますか?」と質問すると、それはやっていないと答えました。そこで「あなたは部下に、あなたが求める結果を部下に出して欲しいのですか? それとも、あなたのやり方を忠実に実行して欲しいのですか?」と聞いたところ、求める結果を出してほしいとのこと。

 だから私は「だったら、まず最初に伝えるべき事は、細かなやり方ではなく、具体的にどういった結果を求めているのかを理由とともに示すことです。その仕事をやる理由や目的を明確にしないままに、いくらやり方を教えても、部下たちは本質を理解せずに作業をするのですから、うまくいくはずがありませんよ」とお話ししました。

 自分の想いを実現するための方法は、実はいくらでもあります。今回の話も、部下にやり方だけを教える、という方法がうまくいかなかっただけです。それを持って、部下の指導をあきらめてしまい、自分で仕事を抱え込んでしまうのは、性急過ぎる決断でしょう。

 部下を指導する方法は、見方を変えたらもっとあります。そして、それを知っていれば、万策が尽きるまで、試行錯誤を続けられるはず。そうした試行錯誤の結果、求める結果を出す形になっていくものなのです。もちろん実際には1万もの策を実行せずとも実現すると思いますが。

 そしてもう1つは、「自分の想いが人を巻き込めるものになっていない」というもの。エゴイスティックに、自分ばかりにメリットがあるような想いを持ったとしても、その想いの結果が他人を幸せにしない限り、人に影響を及ぼすことは難しいでしょう。

 特に、最近の組織目標で、現場のスタッフに敬遠されるのは「売り上げNo.1」という目標です。売り上げNo.1という目標は、あくまでも自分たちにとってのメリットしか謳っていない上に、それを単純に実現しようとすると、お客様に対してかなり無理を強いる、あこぎな商売をしなければいけない、という気持ちになってしまいかねません。顧客志向であればあるほど、素直にこの目標に賛同できないという人が増えてきているようです。

 そういう時は、売り上げNo.1を嫌がる人たちも巻き込めるような、「自社もお客様もともに喜ぶ」ような想いを創り上げることが、大事になってきます。そのためには、ちょっとやそっとでは実現できないような、けれども実現したら素晴らしい世の中になるのではないか、と実感できるような想いを描くことが、重要なのではないでしょうか。

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