「メールは即レス」男が返答に困ったメール例樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

筆者が三井物産のネパール・カトマンドゥ事務所長だった時、毎朝5時半に起きて本社からのメールに返答していた。瞬間即レスが信条だったからだ。だが、即レスできないこともあった。それはどんなケースだったのだろうか。

» 2008年10月30日 15時30分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 筆者が三井物産のネパール・カトマンドゥ事務所長だった時、毎朝5時半(日本では朝の8時45分)には目を覚ました。2階から下の書斎に降りて、小鳥の鳴き声、咲き乱れる花々、番犬の走り回る姿を見ながら、PCを立ち上げる。カトマンドゥのISP電話回線で接続したものだ。2001年当時は高速デジタル回線はなかった。

 日本時間とネパール時間は、誰が決めたか3時間15分(!)という奇妙な時差だ。インドが日本との時差が3時間半なので、ネパールは「インドとは違う」と3時間15分にしたという。

 筆者は、熱いエスプレッソを飲みながら、書斎でアイデアマラソンノートに、発想や、営業企画の種を書き続けていると、「You got a mail」と聞こえて、本社の営業部から仕事の最初のメールが到着する。

 早い時は起きてすぐ。すなわち朝の5時半、東京では8時45分である。メールの内容をただちに読んだ筆者は、瞬間的に返答する。リストの超絶技巧練習曲のように、寸秒を惜しんで超高速で返事を書くのだ。朝一番に早く入るメールほど、当然ながら急いでいるが、時差が先行している日本側の担当者心理としては、それらの回答がすぐに来るとは夢にも思っていないのである。

 一方筆者はと言えば、朝6時前から自宅で本社のメールを待ち受けている。そして、要請のメールが入るやいなや、「〜の件、了解しました。ただ、下記の点をもう少し詳しくご説明ください。それをいただければ、詳しく回答を出すことができます」などと返事を、数十秒以内に送り返すことにしていた。本社では、朝の仕事が始まったころ、コーヒーお茶をPCのそばに置いて、急ぎのメールをカトマンドゥに送ったら、1分も経たないで、メールの返事が入ったらどう思うだろうか。「エエッ、もう回答が来た」飲みかけていたお茶を吹くかもしれない。

 「おい、おい、カトマンドゥって、時差は何時間だ? まだ朝の6時前だろう。そんな時間に即答がくるとは!」と、前に座っている若者に話をしないだろうか? それが狙いだった。この即答は、一種の快感であり、サプライズだ。特に社内でのメールの回答は、特別の理由が無い限り、即答をルールとしていた。これが筆者の信条「メール即答の方針」であった。そのおかげで、カトマンドゥ事務所の樋口は、すぐに回答を送ってくると評判になっていた。これはとても良いことだった。

 困るのは即答できないメールをもらった時。もちろん現地で調査をしないと答えられないメールや、誰かに面談して初めて回答できるもの、企画や計画案、経営案を作成するものなども含まれるが、これらは「了解。調査します」とか「〜日までに調べます」と暫定的なメールを瞬即レスしておけばいい。困るのは、

  1. やたらと長いメール:だらだらと長い“ふんどしメール”は、画面から外れて、読む気にならない。質問に回答するのに、いちいちメールの下をスクロールしなければならないのはキツイ。

  2. 連絡なのか質問なのかがはっきりしないメール:続きのメールが入る可能性があるものは、「了解、追加メールを待ちます」と入れるし、メールで、理解できないことがあるなら、「よく分からないので、もっと詳しく教えて欲しい」と回答することは可能だが、何をすればよいのか分からない時には、質問もできないことがある。

  3. 質問が個条書きになっていないメール:質問が地の分で書かれているだけの場合は、どこが質問だか分かりづらいので回答しにくい。仕方がないので、質問部分だけを全部コピーして、番号を付け直して、個条書きに仕上げて送り直すこともあった。

  4. 相手が感情的になっていたり、こちらが感情的になるような問題メール:お互いをクールダウンするために、回答を出さないこともある。あるいは、いつも即レスの筆者が回答しないことで、怒りを示すこともできる。

 要するに、何を書いているか瞬時に判読できないメールだったり、感情的なメールである。こうしたメールには暫定的なメールを送信して、相手に期待を持たせても仕方がないので本当に難しい。筆者自身も気をつけているが、メール送信する側も、何のメールなのか、質問メールなら質問が分かりやすいか、などと配慮した方が受信側の回答も早くなるだろう。

今回の教訓

クレームメールを送る時もぐっとがまん。数日の冷却期間を置いていた。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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