別の例を見てみよう。以下は、営業部門の担当者にヒアリングをした際の一例。
コンサルタント(受講者):御社は現在、A、B、C、Dの4つの製品分野をお持ちになっていますよね。
担当者(講師):ええ、よくお調べになってますね。
コンサルタント(受講者):4つの中で、今後最も力を入れていこうと思っている製品はどれですか?
担当者(講師):どれって、売れるものなら全部売っていきたいですけど。やっぱり需要との兼ね合いもあるんでね。
コンサルタント(受講者):それは分かるのですが……あえて1番を決めるとしたら、どれでしょう?
担当者(講師):いや、それはむしろ私が知りたいくらいで――あれ、あなたたちにそういうことを教えていただけるものと思ってたんですが。
コンサルタント(受講者):……。
「これではダメ。事前に“仮説”を立て、ヒアリングはそれを“検証”する場にしなければいけない」(講師の伊藤雅彦氏)
例えば、「市場の伸び方で言うと、A、B、C、Dの順に伸びています。しかしAの分野では競合も多いので、御社のシェアが大きいBの分野に力を入れるのが得策かと考えました。この理解で正しいでしょうか?」といった風に質問する。すると、「なるほど、確かにそうですね」だとか、「いえ、実はそうではないんです」のような答えが返ってくる。
「1つでいいから、相手が気付いていないことを見つけて、気付かせる」(伊藤氏)。相手に“気付き”を与えられれば、そこからさらに「この分野でのうちの強みはここで、でもここにこれだけコストがかかっていて……」と、相手から有用な情報を引き出せる。
逆に、「実は力を入れたいのはBではなくてAでして」となれば、「ではなぜAなのでしょう? その理由を教えてください」と、続けて情報を引き出せるわけだ。
まずは、相手に質問の意義を理解してもらい、質問をする土台作りをする。その上で、事前に準備した「“気付き”を与える仮説」を検証して、次の仮説を立てるための質問をする。
この2ステップの手順を踏むことで、望んだ情報を相手から引き出せる確率がぐっと高められるわけだ。では、相手に“気付き”を与える質問とは、具体的にどんな質問のことを言うのだろう。次回は、コンサルタントに学ぶ「気付きを与える質問の仕方」を解説しよう。
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