パーソナルな海外進出 危機管理を常に意識する編樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

海外生活の基本は、何よりも身の安全。そのために筆者は“怖がり”であり続けた――。

» 2008年12月25日 17時46分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 19年間海外で生活して無事に帰国できたのは、どんなところに住んでいても危機管理を忘れなかったからだ(要は“怖がり”なのである)。この期間のほとんどは家族一緒だったのだが、家族がまったく犯罪などの被害に遭わなかったのも筆者の自慢だ。

安全情勢を確認する癖が大事

 もちろん1人の時も危機管理は怠らない。例えば、宿泊先のビジネスホテルから出掛ける前に、ホテルのカウンターで「このあたりはどこが危ないですか」と必ず尋ねるのである。米国のワシントンD.C.に出張した時も同じように周囲の状況を確認した。するとホテルマンは、「裏の通りは極めて危険ですので近寄らないように。ホテル前の大通りでも反対側の歩道は歩かないでください」と言った。

 よく聞くと、ホテルとは反対側の歩道を歩いていると、急に細い路地から暴漢が出てきて「アッ」という間もなく路地に引きずり込まれるという。そうなると、よくて生きたまま身ぐるみはがれるか、悪ければ命をなくして身ぐるみはがれるか――というわけだ。

 海外生活の基本は、何よりも身の安全。その土地の友人やすでに生活していた日本人などから、安全な場所を尋ねる癖を付けよう。また、生活する部屋の家賃が土地の平均よりも安い場合、安全性を疑った方がいい。

サウジアラビアで実行した4つのこと

 筆者はサウジアラビアのリヤドに生活していた時、4つのことを実行していた。

 1つは「合言葉」。筆者が帰宅時に玄関を開ける前、必ず「山」と言っていた。すると部屋の中にいる子供が「川」と言って、鉄の扉を開けるのである。原始的だが、海外で日本語の合い言葉は効果が高い。それに、子供たちの危機管理意識も高まるのである。

 2つ目は「ブザー」。扉の横など、家の各所にブザーをたくさん仕掛けておいた。紐を引くと強烈な警報音が鳴るタイプのものだ。家を長期間に亘って留守にする時は、家の中をちょっとでも歩くと外のブザーが鳴るようにセットしたものだ。幸いにも、リヤドの8年半の生活では一度も鳴らなかったが。

 3つ目は「車」である。強力なサイレンを仕込んだのだ。後部席からスイッチを入れることができた。窓ガラスには強化フィルムを張り付けて、こなごなにならないようにしていた。

 4つ目は「緊急通報リスト」。日本では110番で警察、119番で救急車がやってくるが、国によっては番号がまったく異なる。ヨメサンや子供たちのために、緊急通報の電話リストを電話機にぶら下げた。それからせっかく通報できたとしても海外なのに日本語でしどろもどろになっていてはダメだ。サウジアラビアの場合、自宅の住所をアラビア語で言う練習をしたりもしたのである。

海外生活を安全に過ごすポイント
1 同じ都市でも比較的安全なところに住むこと。家賃や地域の人の意見も聞こう
2 オフィスビルやショッピングセンターなどでは、昼と夜とで様相が異なる。昼間だけで安心してはいけない
3 鉄道も危険な路線がある。地下鉄も危険なところが多い
4 自宅の扉には2つの鍵。内側からはボルト錠を取り付けること(大家の許可を取って)。勝手口も同じ
5 侵入を防ぐ意味でも窓にはシャッターを取り付けよう
6 車はカーステレオは取り外して家の中に持ち帰る。カバンなどを車中に置いておくと窓ガラスを壊され、車上荒らしの被害にあう可能性もある
7 道路で襲われたら、ズボンのポケットに強盗が納得する金額(例えば100ドルほど)を入れておく。抵抗はしない。「ヘルプ」と言っても誰も助けに来ないが、そんな時は「ファイアー(火事だ)」と叫べ

今回の教訓

怖がりすぎぐらいがちょうどいい――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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