ここまで連載してきた先読み『アイデアパーソン入門』、最終回はQ&Aです。発売前に読者を集めて原稿を読んでもらい、その時点での疑問や意見に著者の加藤さんが回答しました。
ここまで連載してきた先読み『アイデアパーソン入門』。最終回はQ&Aとなります。
実は書籍『アイデアパーソン入門』では面白い試みをしています。発売前に読者を集めて原稿を読んでもらい、その時点での疑問や意見を出してもらったのです。当然、完成した書籍ではそうした疑問や意見に対して、加藤さんが回答を出しています。名付けて「先取りQ&A」です。
今回先読み『アイデアパーソン入門』としてBiz.IDに掲載した部分の疑問や意見についても、先取りQ&Aとして掲載することになりました。皆さんの疑問が解消することを祈って――。
プロフェッショナル・アイデアパーソンの打率って、結局のところ、およそどのくらいなんでしょうか? 打率が喩えなのは重々承知ですが、プロでもヒットを打つために1000回とか1万回の失敗(採用されずに消えていったアイデア)があると思えば、アイデアパーソン初心者も気が楽になると思います。
真面目に仕事になるまでには、脳裏を一瞬よぎったレベルのアイデアもどきを含めれば、3桁はボツアイデアがあるでしょうね。真剣に向き合うなら、そのくらいやってもバチは当たりません。とはいえ、現実には1人きりで100以上考えるのは相当大変なのも事実です。漏れもあるでしょう。チームで考える体制を組むことも大きなベネフィットでした。
と同時に、「打率」を捉える時間的な尺度を少し拡げて長めに取ってみましょう。ついつい近視眼的になりますから、ややもすると「試合ごとの打率」で捉えてしまいがちですね。先週の仕事ではいいアイデアを出せなかった……ダメだ! と落ち込んでしまうのは悪いことではないですが、やや短絡的(特に初心者としては)。それはほとんどトーナメント発想じゃありませんか? ちょい長め、数試合から10試合ぐらいの中期的視点、もっと云えば過去1年間ぐらいの長期視点から俯瞰(ふかん)してください。母数を増やして考えるべきだと思います。
プロのスポーツ選手だって、長いリーグ戦を戦う中では、ヒットが出ない試合もあります。それが数試合続くこともある。その反対に固め打ち、猛打賞で打率を荒稼ぎすることもある。その結果としての成績です。もちろん、チームとしてはここ一番の試合で役立たずだったりすると周囲から冷たい視線は浴びるわ、監督(社長?)からは怒られるわ……と凹(へこ)むこともありましょう。その失敗には歯を食いしばって耐えてください。それもプロフェッショナルだと思います。
アイデアパーソンとしてはオールラウンダーとスペシャリスト、どっちが多いんですか?
中期的な目標としては、「だいたいオールラウンダー、一部スペシャリスト」になることが要求されると思います。どんな職種でも同じですが、ある程度の“規定演技”ってありますよね。それをこなすことはプロのプロたる基本でしょうから。
その上で、あなたらしさを発揮できる専門性があるとうれしい。趣味を生かして公私混同して、アイデアが出しやすいジャンルを持っていることでもいいでしょうし、特定の商品とか地域に強いのも専門性。単純に体験数が多いジャンルがあるのも立派なスペシャリストです。
アイデア出しに使うツールは?
個人的に、アイデア出しのためのツールを「考具」と呼んでいます。その目的を整理すると、
があることが分かります。その視点を持って書店へ行けば、本当にたくさんの考具が見つかります。それだけアイデアがビジネスにもプライベートにも求められているんでしょうね。わたしもそのすべてを試したわけではありませんが、それぞれに特色もあり、効果もあるのだと思います。ただ、残念ながらあなたとの相性はあります。相性を見抜くか、または実践的に試してみるか。そのプロセスを省略してはいけません。
まずは書店に並ぶ本を片っ端から手にとって「押さえる」してみてください。その中で何となくピンとくるものがあったら、買う。そして使ってみる。「押さえる」から「ほる」ですね。
あなたが最初に選んだその考具がぴったり来たらとてもラッキー! でもそれほどの好感触でなくても、数回から10回ぐらいは使ってみてください。カラダに馴染んでくるとまた違う感覚が襲ってくることもあります(ここが難しいところ)。最初は硬くて靴擦れしたけど、いつの間にか抜群の履き心地を提供してくれる革靴みたいな考具もあります。
何度やってみても相性がもう一つな考具もあります。どこかで見切りをつけることも必要。また使っているうちにあなた自身の技量が発展して、物足りなくなる可能性もあります。それは考具の交換、または追加のタイミングかもしれません。
1つ2つと考具を使い込んでいくと、考具ごとの個性というか特徴が分かるようになってきます。あるいは自分の状態によって道具を使い分けてみたりすることができるようになってきます。スポーツ用の道具と同じです。プロの選手はバットやグラブを自分専用にカスタマイズしたり、場面によって使い分けていたりしますね。
そこまで行ったら、もうその考具は自家薬篭中の逸品。少々時間はかかりますが、あまり焦らずに、でもアイデアは出し続けながら、自分なりの考具ラインアップを整えてみてください。
アイデアを企画レベルに整えることは難しいと思いますが……?
そこに誤解があるみたいですね。手間がかかって大変なことではあるんですが、アイデアを企画にするのは(暴論ながら)「作業」の範ちゅうに類する工程だと思っています。外注も可能ですし、カスタマイズの元となる前例もたくさんあります。
より大事なのは、企画の素=アイデアを出すこと。「企画化の作業をする人」は素になるアイデアを考えてくれません。どうする? あなたが自分で考えるしかないのです。
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