みんなの疑問に答えます――先取りQ&A先読み『アイデアパーソン入門』(3/5 ページ)

» 2009年01月04日 08時30分 公開
[加藤昌治,ITmedia]

24時間循環風呂について

「24時間循環風呂」疲れそう

 「24時間循環風呂」では脳が疲れてしまいそうです。


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 「24時間循環風呂」反応高かったですね。ありがとうございます。本当に24時間ギンギンにやらなくてもよろしいです。ある程度は比喩的な表現であります。

 まずは何か新鮮な情報との出会いや体験があった(はずの)ときにスルッと流さない、ということ。あるいは出会っただけで止めてしまわずに。ぶつかった出来事がキッカケになって、自分でもすっかり忘れていたようなことが次々と思い出されたりしますね。記憶がふわーっと甦る。その流れを大事にして欲しい。おそらく1〜2秒の話です。「ぶつかる」「思い出す」の段階まで入る。「なんかスゲーなあ」と瞬間的に思ったり、「あ、そういえばこんなことあったな」とチラリ。

 そうやって、昔の思い出をときどきでいいから表に出す、記憶の棚卸し作業をする。と同時にお風呂からお湯を汲み出したなら(≒アイデアを出したなら)、不足した分は追加しましょう。それが新しい体験を積むこと。お湯の循環+追加をできる限り頻繁に行える行動習慣を24時間循環風呂と呼んでみました。

網づる式の目を細かくするには?

 網づる式、の網の目を密にしていくにはどうすればよいのでしょう?


 すでに知っている既存の要素にどんな“とっかかり”をつけるか、がポイントになると思います。「タグ」です。タグが素敵なのは、一つの事象についていくつでもつけられるところ。ある一つの記憶に到達する道は複数あるし、一つの記憶が出発点となって、どこにでも行ける。すべての道はローマに通ず、と云います。その記憶版を作ろうよ、ということですね。四方八方に道が張り巡らされた「記憶の網」があって脳内検索を楽にすることができれば、すぐ手にすることのできるアイデアの素は当然ながらグンと増えるのですから。

 一本の万年筆に対して「筆記具」「万年筆」「ドコドコ製で品番は××」などの一般的なタグから始まって、「初めてモノ」「自分なりのカスタマイズ」「ヌラヌラ(書き味)」「シマシマ(の模様があるから)」「著書の表紙を書いた」「こき使っている」……と、いたって個人的で私的なタグまでいくつでもつけられます。

 それで、例えば「つらい仕事を楽にするアイデア」なんてお題が与えられたときに、自分だけは万年筆、という既存の要素をスッと「思い出す」ことができてしまうわけです。それがアイデアに直結するかどうかは不明ですが、他人とはちょっと違う視点から課題を見ることができたり、違うアイデアが出てきたりする可能性を手にすることができたわけですよね。「持っているだけで思わず笑っちゃうペンを全員に配付する」なんてアイデアも出てくる。

 既存の要素を収集するばかりではなく、仕舞い方にちょっとした工夫があると後が楽になります。網づる式、という言葉に込めた気持ちです。

自分ごと化について

「自分ごと化」って何ですか?

 「自分ごと化」についてもうちょっと説明してください。


 自分ごと化=自分自身の事柄として、対象に向き合えること、です。第6考で例に出した、子どもの名前がいい例。当たり前ですけど100パーセント自分ごと化してますよね。見ず知らずの方のお子さんの名前だと……? 残念ながら自分ごと化するのは難しい。愛犬だとその間に位置するでしょうか。

 自分との関係性が薄いと関心度も低くなりますし、当然思い出す頻度も少なくなってしまいます。ところがアイデアとはわがままから始まるものですから、関心度の高いこと、自分との距離感が近いモノ・コトをヒントにする傾向が高くなります。

 距離感の遠いモノ・コトにも意識を拡げるのか、遠いモノ・コトを自分に引き寄せておくのか。「たぐる」は後者の考え方。自分が遠くに行くのではなくて、対象を近くに寄せておくことで楽しよう、と思っています。24時間循環風呂、網づる式、と云い換えることもできます。近くにあると、「自分ごと化」しやすくなります。つまりアイデアになりやすくなる。そして「自分ごと化」されたモノ・コト=既存の要素がいっぱいあれば、それだけアイデアは出やすくなるのです。

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