名メジャーリーガー、トニー・グウィンは「春のキャンプはマッスル・メモリーを呼び覚ますために行うんだ」と語っていたそうです。混沌としたアイデアの世界で戦うためにも、脳内のメモリーを呼び起こすトレーニングを怠らないようにしましょう。
体験にしても知識にしても、いくら記憶として収納しても、いざというときに引き出してこられないならば意味がありません。それぞれの記憶(直接体験、間接体験と知識)がどのタイミングで必要になるのかはまったく分かりません。また、そのときに何がアイデアのヒントになるかも正直見当もつきません。アイデアの世界はどうにも混沌としています。
私たちにできそうなことと云えば、
名メジャーリーガー、トニー・グウィンは「春のキャンプはマッスル・メモリーを呼び覚ますために行うんだ」と語っていたそうです。プロアスリートになっても、忘れずに基礎練習を繰り返している理由が分かります。カラダは覚えているけど、忘れもする。絶えずカラダを動かし続けていることで、いつでも試合に出られる状態にしておくのです。
理想はといえば、脳はいつでも24時間循環風呂。誰かが入っていようといまいと、お風呂の中でお湯をぐるぐるとかき混ぜながら、新しいお湯はそのままに、古いお湯もきれいにしながら対流させている。お風呂の表面(そのときの顕在意識)に、いろんな記憶が押し出されていくように。
そしてそれぞれの体験、知識は芋づる式ではなく(1本のつるだけでつながっているようなイメージありませんか?)、「網づる式」で四方八方につながっている。網のどこかに重みがかかれば、網全体がボヨンと揺れる。しぶとい記憶、とでもいいましょうか。同じネタであってもリピートして構いません。組み合わせる相手が違えば、別のアイデアになるんですから。
特にアイデアを迫られていなくても、そんな状態にスタンバイできていたら素晴らしいことですね。もう、どんな難しい魔球でもカツンと打てちゃいそうな気がします。打率を高めていくためにも効果ありそうですよ?
今回の先読み『アイデアパーソン入門』、いかがだったでしょうか? 混沌としたアイデアの世界であるからこそ、脳は常に24時間循環させておくべきで、さらにいろいろなアイデアが四方八方、さながら神経細胞のニューロンのようにつながり合う――のが理想形。たまには、長風呂でのぼせてしまうようなこともあるかもしれません。そんなときは、ちょっぴり休憩を挟むのもいいでしょう。
次回の先読み『アイデアパーソン入門』は「体験と知識を【自分ごと】化する技を『たぐる』と名付ける」です。お楽しみに――。
大手広告会社勤務。1994年、大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(阪急コミュニケーションズ刊、2003年)、『アイデア会議』(大和書房刊、2006年刊)がある。
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