体験と知識を【自分ごと】化する技を「たぐる」と名付ける先読み『アイデアパーソン入門』

プロのアイデアパーソンにとって基礎的な、けれども欠かすことのできない「練習」を「たぐる」と名付けました。【他人ごと】ではなく【自分ごと】、とし続けられるか? が焦点です。

» 2008年12月29日 08時30分 公開
[加藤昌治,ITmedia]

 プロフェッショナル・アイデアパーソンにとって基礎的な、けれども欠かすことのできない「練習」とは何か、が明らかになってきました。

 キーとなるのは既存の要素の取り扱い。直接体験、間接体験、知識をどのように探しだし、裏に取り込み、かつ忘れないように活性化しておくか。アイデアパーソンにとって必要な既存の要素を常に、自分の手の届く場所に引き寄せておくのか。【他人ごと】ではなく【自分ごと】、とし続けられるか? が焦点。

 そのための技を紹介しましょう。それは「たぐる」という技であります。

 『大辞泉』によれば、

  1. 両手で代わる代わる引いて手元へ引き寄せる。「ザイルを―る」
  2. 物事をそれからそれへと引き出す。一つ一つもとへたどる。「記憶を―る」

 いかがでしょう。今わたしたちが欲しいと思っている技をいい表してはいないでしょうか。

 アイデアパーソンにとって「たぐる」方向は二つあります。まずは外へ。自分が知らなかったことを「たぐる」。この世の中にある数え切れないほど広がっている知識を次から次へと捕まえ、そして直接、間接の体験をする、また連鎖させていくことで、自分ならではの既存の要素を増幅させていく「たぐる」です。

 それから内へ。思い出せないことを含めて、すでに自分が知っていることを「たぐる」。放っておけば沈んでしまう過去の既存の要素たちを拾い、引き寄せ、記憶の表層に昇らせる。そして当然、できる限りアイデアとして組み合わせて、世の中へアウトプットしていく「たぐる」ですね。

 いつでも世の中を、そして自分の記憶を「たぐる」ことを続けていき、新鮮なアイデアというヒットを打ち続けていく。これこそが、いざというときにも頼りになる、本当のプロフェッショナル・アイデアパーソンじゃないでしょうか?

編集部から

 今回の先読み『アイデアパーソン入門』、いかがだったでしょうか? アイデアのもとを探るだけではダメ。脳内に取り込んで、いつでも活性化しておく。さらに【他人ごと】ではなく【自分ごと】にしておくこと――。これが「たぐる」行為なんですね。情報過多のこの時代、本当の意味で情報をたぐってますか? 意外と難しいかもしれません、しっかり「たぐる」ことは。

 次回の先読み『アイデアパーソン入門』は「『たぐる』を分解してみると……?」です。お楽しみに――。


著者紹介:加藤昌治(かとう・まさはる)

 大手広告会社勤務。1994年、大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(阪急コミュニケーションズ刊、2003年)、『アイデア会議』(大和書房刊、2006年刊)がある。


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