企業が持つ“リソース”の価値をチェックする――VRIO分析4文字英語で最強フレームワーク

「4文字英語で最強フレームワーク」第4回は「VRIO分析」をご紹介。「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」という4つの要素から、内部資源の有効活用度をチェックしてみましょう。

» 2009年06月25日 12時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

4文字英語で最強フレームワークとは

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 フレームワーク(枠組み)を上手に活用することで、仕事の効率と成果を格段にアップできる――4文字英語の最強フレームワークを5回に渡ってご紹介します。

 今回紹介する最強フレームワークは、『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』(ソフトバンククリエイティブ刊)から抜粋しています。


 「4文字英語で最強フレームワーク」第4回は、企業の内在価値を探る「VRIO分析」を説明します。「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」という4つの要素から、内部資源の有効活用度をチェックしていきます。

企業の持つ経営資源(=リソース)とは?

 リソースとは、企業の経営資源、例えばキャッシュなどの財務的な資源はもちろん、人材、開発力、ブランド力、組織力などを指します。リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは、J・B・バーニーが提唱した戦略論です。「企業が競争優位性を保てるかどうかは、企業の経営資源やそれを活用できる能力(ケイパビリティ)の開発次第である」というものです。特に、このケイパビリティは複製が難しいため、競争優位性や利益の源泉であるとしています。平たく言えば、リソースの確保は金で解決できても、それを活用する能力は別ということなのですね。

RBVの代表的なフレームワーク、VRIO分析

 VRIO(ヴリオ)は、企業の内在価値を探る4つの要素、「経済価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Inimitability)」「組織(Organization)」の頭文字をとったもので、企業が持つリソースに対して以下のような問いに答える形で、内部資源の有効活用度をチェックするものです。下の例を参考に、リソース項目とのマトリックスにして、4つの問いに対して考えてみてください。

V:経済価値(Value)に関する問い

 その経営資源を持つと、市場環境における脅威や競合を無力化することができるか? あるいは他社にとっての脅威を自社の機会ととらえることができるか?

R:希少性(Rarity)に関する問い

 業界においてその経営資源を保有している企業は、ごく少数か?

I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い

 その経営資源を保有していない企業は、その経営資源を自社保有するために大きなコスト負担が生じるか? あるいはコスト上、不利な状態になるか?

O:組織(Organization)に関する問い

 その経営資源を有効活用するための組織的ルールは整備されているか?



VRIO分析の例

人材技術開発力資金力
V 経済価値(Value)に関する問い
R 希少性(Rarity)に関する問い×
I 模倣困難性(Inimitability)に関する問い×
O 組織(Organization)に関する問い××

 例えば、市場拡大が期待される技術分野があり、その専門知識を身につけている人材が非常に少ない状況があると想像してみてください。その上で、自社の経営資源をチェックしてみます。

V:経済価値(Value)に関する問い:Yes

 その専門知識を持った人材を確保し、そのアイデアを特許申請すると、競合に対して非常に優位に立てます。

R:希少性(Rarity)に関する問い:Yes

 該当する人材は、業界内でも限られており、希少性が高いといえます。

I:模倣困難性(Inimitability)に関する問い:Yes

 競合が希少な人材を確保して、それによって特許などの知的財産を獲得するには、非常に時間とコストがかかります。

O:組織(Organization)に関する問い:No

 その専門知識を持った人材を採用、適切に評価するための人事システム、知的財産を権利化するための社内ルールの整備はできていません。


 一般的に、利益が薄いと思われている業界でも、卓越した収益を上げる企業が存在します。そうした企業の多くは、RBVで分析してみると、非常に強い内部の経営資源と、それを生かすための組織やルールがしっかりしていることが分かります。この価値が高く、希少性があり、模倣困難な経営資源を保有し、なおかつ活用できる力――これこそが真のコア・コンピタンスなのです。

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