個人事業主もサラリーマンも、知っておいて損はない「税」の話。今回は一般になじみ深い「所得税」の計算ロジックを考えてみよう。
今年も確定申告の時期がやってきた。個人事業主は前年1月から12月までの所得を申告し、税額を確定、納税する。サラリーマンも副業の収入を申告したり、医療費が多い場合は還付を受けたりする。今年は2月16日から3月15日まで1カ月間がその期間だ。
筆者は2年前に「パソコン好きが青色申告を体験してみると?」という記事を書いた。個人事業主になったばかりの方と、起業を考えている方を対象に書いたが、今回はサラリーマンの方も対象に“税”について書いてみたい。
政権交代により、「子供手当」「高校の無償化」といった言葉を耳にする機会が増えた。その財源として配偶者控除や扶養控除が廃止になるといったニュースも飛び交うようになった。この手のニュースや記事に出てくるのが、年収○百万円、中学生と高校生を持つ家族4人の場合は――といったモデルケースで、場合によって得だ損だと解説される。ニュースを見ながら「自分はもうチョット年収が低いぞ」「子供は1人なんだけど」と思ったことはないだろうか。
計算のロジックを理解していないと、イマイチ理解できないのが税の仕組みだ。2年前にも書いたが、筆者自身はサラリーマン時代は税のことは全く興味も知識もなく、年末調整などは訳も分からず行っていて、生命保険は10万円を超えれば5万円控除されることを理解していなかったので、○○生命、△△生命と何枚も張っていた。○○市に住むと住民税が高いという都市伝説も「へえ〜、そうなんだ」程度に思っていた。国民健康保険は住居地により差があるが、住民税はどこに住んでも同じということを知ったのは独立した後だった。
筆者自身は今現在も税に詳しいとは思っていないが、ニュースを見ながら「このモデルケースは課税所得を300万円で計算してるな」「我が家は大学生と高校生だから特定扶養控除がなくなると痛いなあ」とある程度理解できるようになった。
と言うことで、今回はサラリーマンの方も、ニュースで取り上げられるモデルケースの計算ロジックがある程度理解できるように、個人事業主向け:サラリーマン向け=7:3くらいのイメージで税について書いてみたい。内容的には2年前の記事と重複(経費削減のおり、同じ図も使用したり)するところは多いが、お許しいただきたい。
法人は3月決算とか9月決算とか決算期を任意に決められるが、個人事業主は1月から12月の1年で決算を行い、2月から確定申告を行う。サラリーマンも課税対象となる期間は同じで、これは変えることができない。
○○税と言って思い浮かぶのは、所得税、住民税、消費税、自動車税、重量税、タバコ税などがあるが、今回の主役は所得税と住民税だ。所得税と住民税を計算する過程で重要なのが課税所得なので、まず課税所得について書いてみたい。
まず最初は個人事業主の場合、
となる。「所得が上がると税金が上がる」ということはよく聞くと思うが、ここでいう所得は“課税所得”のことだ。課税所得が少なければ、払う税金も少なくなる。売上が多くても経費や控除が多ければ払う税金が少なくなる。
経費は職種により異なるが、交通費や事務所代、PCやプリンタなどの備品、接待交際費、通信費といった仕事に必要な諸々の出費だ。
例えば年間の売上が960万円で、経費が360万円だとすると
が所得となる。各種控除とは下記のようなものだ。
例えば社会保険料控除が71万円、配偶者控除が38万円、扶養控除が38万円、生命保険料控除が5万円、基礎控除が38万円とすると、控除額の合計は
となる。先ほどの所得600万円から各種控除を引くと
となり、この410万円に対し税金が計算されることになる。これが所得税の課税所得だ。
サラリーマンの場合は、業務で発生した経費は会社が払ってくれるので、基本的に経費は認められない。仕事でしか着ないスーツや革靴なども自腹となっている。経費は認められないが、その代わりに給与所得控除なるものがあり、収入によって一定額が控除される仕組みだ。式にすると
となる。給与所得控除は以下の表から計算することができる。
給与の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合には65万円 |
180万円〜360万円 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円〜660万円 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円〜1000万円 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円〜 | 収入金額×5%+170万円 |
つまり給与収入が800万円の場合、
給与所得控除額は200万円、年収から200万円を引いた600万円が給与所得となる。年金や健康保険はサラリーマンと個人事業主では異なるが、仮に社会保険料、配偶者控除等の各種控除が同じなら
となり、この410万円に対し税金が計算されることになる。
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