ITが発達した現代、覚えておかなければならない「知識」はかえって昔よりも増えています。当然、その教育をしっかり行わなければ人は育ちませんが、そのために何をしたらよいのでしょうか? 今回は、「違いの視覚化」というテーマを取り上げてみましょう。
前回の記事からずいぶん間が空いてしまいました。申し訳ございません。しかも前回予告したものとはちょっと内容が変わってしまっています。前回予告の「学びの階段を作るための手順」はまた別途書くことにしますのでご容赦ください。
さて、本題に入る前に1つお知らせを。本題に入る前に1つお知らせを。今月下旬に名古屋で公開セミナーを予定しています。「部下に必要な仕事と知識を教え込む3つの心得」セミナー、4月22日に名古屋・中部産業連盟にて開催です。当連載で扱っている「知識を教える技術」を中心にしたセミナーです。中部地方の方はこの機会にぜひご参加ください。
それでは今回のテーマ、「違いの視覚化」に入りましょう。まずは次の文章を読んでください。
ここに2つの立体があります。
A立体は一辺が10センチの立方体の高さを半分に切った上に同じ直径で高さ5センチの円柱を載せた形、B立体は半径と高さが5センチの円柱の上に縦・横・高さが10センチ×10センチ×5センチの箱を載せた形です。
誰だこんなアホな説明文を書いた奴は! と怒鳴りたくなるところですよね。図にすると下記のようになります。
要するにB立体はA立体をひっくり返しただけのものなんですね。直径を半径に言い換えたり、「立方体を半分に切った」を「10センチ×10センチ×5センチ」とわざわざ言い換えたりと、わざと回りくどく書いてあるので、読まされるほうはたまったものじゃありません。
ところが、ある程度難しい概念を勉強しようとすると、こういう「表現が統一されておらず、わざと分かりにくく書いたような説明文」にひっきりなしに出くわすものです。書き手が注意して書かないと、悪気がなくてもこういう間違いをしてしまいがちなんですね。
そもそも、
わけです。もし視覚化せずに文章で書くと下記のようになります。
ここに2つの立体があります。
A立体は一辺が10センチの立方体の高さを半分に切った上に同じ直径で高さ5センチの円柱を載せた形、B立体はそれをひっくり返した形です。
このほうがよほど分かりやすくなってはいますが、やはり図1の明快さには及びません。
なのです。ごくあたりまえの話ですが、まずはこれを改めて認識しておきましょう。
続いて、この文章を読んでください。
小売業のチェーン組織形態は大まかにレギュラー・チェーン、ボランタリー・チェーン、フランチャイズ・チェーンの3種類に分けられます。
レギュラー・チェーンは、百貨店やスーパーマーケットのように、本店が力をつけてきた段階で本店からの直接投資で支店を増やす形態です。
ボランタリー・チェーンは、それぞれ独立している複数の小売業者が集まって形成する協同組合的なチェーン組織です。
フランチャイズ・チェーンは、個々の店舗への投資はフランチャイズ本部ではなく加盟店が行い、本部は加盟店に対して契約に応じて「ノウハウ」や「物流」などのサービスを提供する対価として収益を得る仕組みです。
これ自体は流通関係の勉強をすると必ず出てくる基本的な知識ですね。ただ、基本的ではありますが、まったく知識がなく社会経験が乏しい段階でこれを読むと、すぐにはピンと来ない可能性があります。
実はこの例に限らずビジネス実務教育を行う場合、
というパターンで「知識」を教えなければいけないケースは非常に多いのです。これ、うまくやれてますか? グループを構成する要素の間の「違い」をうまく教えることができていますか?
ちょっと自信がない、という人はぜひチャレンジしてみてください。「違い」を視覚化するために大事なのは、
です。
今回事例として取り上げた、チェーン組織形態のうち、レギュラー・チェーン(百貨店など)とフランチャイズ・チェーン(コンビニなど)は、流通業の知識がなくてもイメージしやすい形態です。何しろ誰でも毎日のように目にしてますから。
ボランタリー・チェーンはあまり表に出ないので、知らない人も多いですからこれはとりあえず無視しましょう。
では、レギュラーとフランチャイズの違い、それを一点だけ挙げるとしたら? 何でしょうか?
答えは前述の課題文の中に出ています。
この差、誰が投資をするかの違いですね。これを区別できるような図を書きましょう。どう書くか、考えてみてください。
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